あめに溶かして

 ざあざあと雨が降る中での任務だった。
 内容はブラッドに割り振られる任務としては比較的難度の低いものだ。他の支部なら戦闘経験を積んだベテランが引き受けることが殆どだろうが極東支部の神機使いであれば新人がチームの隊長と共にこなすこともよくある、そんな任務。
 悪天候の中での任務というのも決して珍しいことではない。アラガミは天候とは関係なく現れるのだから雨が降ろうと雪が降ろうと必要があれば出撃するのが神機使いである。
 討伐対象だったヴァジュラとオウガテイルを特に苦戦することもなく撃破し帰投したのがつい数分前のこと。


「おかえりなさい、ギル」
「……ああ、ただいまキトリー」

 パタパタと出迎えてくれたキトリーにギルバートはそう短く返す。
 気を利かせたらしいキトリーが用意してくれたタオルを受け取り、ひとまず身体を拭いて息を吐く。神機使いの大半が任務で出払っているのかそれとも自室で各々自由に過ごしているのか、極東支部のエントランスは普段より人が少なく静かだった。
 尤も、エントランスが賑わっているときは何か良くないことが起きている可能性も高いので静かということは極東地域はいつもと変わらない状況なのだろうし決して悪いことではないけれど。

「温かいココア、飲みませんか?」
「それはお前が飲みたいだけじゃないのか?」

 キトリーの言葉に思わず苦笑する。
 雨で身体が冷えているし温かい飲み物を貰えるのはありがたいが自分はココアなんて柄じゃない。彼女が飲みたいと思っているものを挙げただけでは——なんて思ったがキトリーが自分の美味しいと思っているものを勧めているのだとしたらキトリーらしくて微笑ましくもある。
 今となっては極東地域でその名を知らぬ者はいないほどの活躍を見せているキトリーだが、その素顔は年相応の愛らしい少女そのものである。

「それともギルはお茶のほうが良かったですかねー」
「……いや、ココアでいい」
「いいんですか?」
「キトリーが勧めてくれたものだからな」

 表情を輝かせ、すぐに準備しますねとラウンジのほうへと消えていくキトリーの背中をギルバートも追う。
 自分は彼女に少しだけ甘いのかもしれない。だが、たまにはこういう日も悪くはない。


*こばと様宅キトリーちゃんお借りしました