「他のみんなには内緒な」
リカルドの言葉にニールとミネットはどういうことかと首を傾げた。
否、わざわざ自分から言いふらしたり自慢をするつもりはないし秘密にしておくようにと言うのならそうするつもりではある。リカルドだって二人が隠し事を簡単に言いふらすような性格ではないことを理解しているからそう発言しているのだろうけれど。
「いや、大したことじゃない。クッキーが余ってるんだがせっかくだから二人で食べないかと思ってね」
そろそろ賞味期限が切れそうなので何とか消費しておきたいがハウンド全員に振る舞うには少なく、かといって一人で食べるには多い量なのだとリカルドは続ける。
最初はフィムにでもあげようかと考えていたが彼女に食べ物を与えると与えただけ食べてしまうだろう。つい先日も余っていたチョコレートを与えてしまったばかりだし甘やかしてばかりではアラガミとはいえ彼女の健康にもよろしくないのでは、と考えていたところに偶然任務から戻ってきた二人を見て声をかけたらしい。
まあ、例えばユウゴやクレアが二人だけクッキーを貰ったなんて知ったところで不平等だと文句を言うタイプではないだろうけれど。
クッキーを皿に乗せ、マグカップにココアを注ぐ。リカルドの手際の良さにはいつも感心してしまう。
おやつの時間には少し早い午後二時。他の人たちはまだ任務から戻っていない様子。
この雰囲気――以前フィムが「よんでほしい」と持ってきた本で見た上流階級の人たちのお茶会に似ているような。尤も彼らのように豪華な衣装に身を包み高い紅茶や菓子を楽しんでいるわけではないけれど。
ココアを一口飲んで、ふとミネットは顔を綻ばせた。
「君とこうしてのんびりと過ごすの、久しぶりだなって思って」
「そういえばそうだな」
ニールと過ごす時間が全くないわけではないけれどハウンドの任務はいつだって忙しいし、お互いの休みが重なることはあまりないほうだと思う。
あったとしてもそんな日はユウゴやフィム、ジークたちも比較的暇だったりして「二人きり」ということは少ない。
もちろん、大勢で過ごす賑やかな時間もそれはそれで楽しくはあるし嫌いではないのだけれど、たまにはこうやって時間も忘れてのんびりと過ごすのも悪くはない。
――ペニーウォートや朱の女王ではここまで穏やかな時間を過ごすことは出来なかっただろう。朱の女王はペニーウォートと比べればAGEの扱い自体は良いほうなのだろうけれど。
「……甘い、ね」
それはココアか、クッキーか。もっと別のものなのか。
いつもより甘く感じるけれど、とても優しい味がする。……大袈裟かもしれないが幸せだ、と感じる。
「…………こういう日も、たまには悪くないかもな」
「そうだね」
ぽつぽつと言葉を紡いで、クッキーに手を伸ばす。何でもない平穏な時間が過ぎてゆく。それが幸福なのだろうと小さく笑みをこぼした。
*こばと様宅ミネットちゃんお借りしました