星流る

「あ、流れ星」

 空を見上げていたミネットがふとそう声を漏らした。
 いつもより遅い時間の任務。討伐対象のアラガミを撃破した時には既に太陽が沈んでいた。帰投するまでの僅かな時間の出来事である。
 厄災によって灰に蝕まれた地上は随分と酷い有様だが——空は子供の頃、厄災発生より前に見たものと殆ど変わらない姿のままだ。

「……そういえばそろそろ流星群の時期だとアインが言っていたな」

 ミネットのすぐ隣で倒したアラガミのコアを回収していたニールは思い出したように口を開く。
 ダスティミラーのオーナー、アインが数日ほど前に他愛のない雑談の中で確かそのようなことを教えてくれた気がする。彼は時折夜空を……恐らくは夜空に浮かぶ月を眺めていたから流星群についても詳しいのだろうと勝手に納得していた。
 尤も、自分たちにはAGEになってからのんびりと夜空を見上げるなんて経験は殆どなかったような気がするが。

「流れ星に願いごとをすると願いが叶うって言うけど」
「確か三回、だったか? あの一瞬のうちに三回も願いごとを唱えるのは流石に難しい気もするが……」

 流れ星だ、と気付いたときにはもうその瞬きは消えて見えなくなっているだろう。
 その一瞬で願いを唱えることが出来たなら何か良いことがあるのではないか、と考える気持ちは分からないでもない。
 もっと幼い頃であれば兄弟とどんな願いごとをするかを語り合ったり誰が一番に願いを唱えられるか競ったりするようなこともあったのかもしれないけれど。なんてことを想像してニールは小さく笑う。
 ——刹那の瞬きのうちに叶えたい願いを唱えるのは一度だって難しいが流れ星に願ったことが本当に叶うのならばロマンのある話ではある。実際に何かを願うつもりがある、というわけでもないけれど。

「でも、きれいだよね。流れ星」
「流れ星自体はあまり珍しいものでもないと聞いたが、こうやってじっくりと見る機会もないからな」

 そんなことを言っている間に夜空で再び星が瞬いた。
 やはり一瞬の出来事で、どんな短い願いごとだったとしても唱えられそうにない。願いごとなんて流れ星に願うようなものでもないのかもしれないけれど。

「……そろそろ帰るか」
「そうだね。早く帰らないと怒られるかもしれないし」

 たまにはこんな、星が流れ落ちる夜の任務も悪くはない。


*こばと様宅ミネットちゃんお借りしました