傷口に愛を

「また無茶な戦い方をしたんですか」
「無茶じゃないわよ。それが最善だと思ったから行動しただけ」

 その結果負傷することはあるけれど、誰かが命を落とすことに比べれば大した問題ではない。適合試験を受けて神機使いになったあの日から怪我なんて日常茶飯事だ。擦り傷であれば負傷のうちにも入らない。
 ——手足が吹き飛んだり内臓が傷ついたりするとなると話は別だが、怪我をするのが怖いなんて感じるような心は遠い昔に置き去りにしてしまった。

「私は自分の手の届く範囲だけ守れるならそれでいいもの。世界を守りたいだとか、見知らぬ隣人を救いたいだとか、そんな大層な使命感なんて最初からないし」

 家族と、自分がリーダーを任されてしまった第一部隊の面々と。アナグラの人々は……積極的にどうにかしたいとは思わなくても、任務で同行しているのならば死なせはしないと思う程度の情はある。アナグラ内部にアラガミが侵入したと聞いてその危険性を理解していながらリンドウの神機に手を伸ばしたこともあるし。
 少なくとも見知らぬ人間まで掬い上げたいと思うような出来た人間ではない。流石に目の前で今にもアラガミに捕喰されそうな他人を見て見ぬふり出来るほど人間性を捨ててもいないつもりではあるけれど。

「あんたのことも、まあ、助けなくもないわ。別に私の助けなんてなくても切り抜けてそうだけど」
「オトハさんらしいと言えばらしいですけど、何かあってからでは遅いですからね。僕も医療班の端くれとして出来る限りのことはしますけど」
「医療班、ねぇ……」

 医療班に配属された新人。それが目の前にいる、少年のようにも少女のようにも見えるレンに与えられた肩書き。
 新人でありながら、もう随分と前に行方知れずとなったリンドウと共に戦っていたことがあるという。……医療班にレンという名前の新人なんて本当はいないことも、この人の存在が自分にしか認識できないものであることも薄々気付いている。
 自分の脳が作り上げた幻覚なのか、或いは幽霊のような存在なのか——この世ならざる者の存在を信じてはいないけれど——もっと別の何かなのか、オトハに知る術はない。

「ま、医療班のあんたがいるなら私が怪我をしたって何とかしてくれるでしょ」
「またそういうことばかり……」

 こういう生き方しか出来ないのだから仕方ない、なんて開き直ることはまだできないけれど。隣にいて、助けてくれる人がいるのだから自分はどんな戦い方だって出来る。