I don't know why

*レンもリンドウも両方同時にアナグラに存在しているゆるふわ時空

 オトハが怪我をした、という噂はその日のうちにアナグラに広まった。
 入隊間もない新人は「あの第一部隊の隊長が負傷するなんて」と驚いていたが、彼女をよく知る者たちからすればいつものことである。

「怪我、とは言うけど骨が折れたわけでも体に穴が空いたわけでもあるまいし大袈裟なのよ」

 神機使いとは肉体も頑丈なようで多少アラガミに吹っ飛ばされても案外何とかなる。もちろん死ぬときはあっさり死ぬので油断は出来ないけれど、今日のオトハの怪我は大したことないものだ。
 少し足がズキズキと痛む程度で、その痛みも歩けないほどではない。任務には多少影響が出るかもしれないがそれも恐らくは数日の話。薬があれば痛みを感じることもない。
 入隊したばかりの新人神機使いが極東で戦い慣れた神機使い、それも隊長クラスの人間が負傷したというだけで不安に思うのも無理はないかもしれないけれども。

「体に穴が空いたらこの程度では済みませんからね」

 隣にいたレンが溜息を漏らす。
 念のため痛みが引くまでは休んでいろというツバキやリンドウの指示で休んでいた。アナグラを自由に歩き回っていても特に咎められないので暇を持て余したオトハは部屋を抜け出しアナグラを探索していたところだった。
 これが大怪我だったら出歩くことなんて出来ないし生死を彷徨っていたかもしれない。

「……普通に歩けるんだから休みなんて必要ないと思うのだけど」
「それで無茶して怪我が悪化したらどうするんですか、全く」
「それは……そうだけど、休んでると体が鈍っちゃうじゃない」

 神機使いになってから普段の休暇や神機の不調以外で休んだことは殆どない。
 痛みが引くまで、なんて曖昧な指示ではあるけど恐らく数日は戦えないだろう。第一部隊のメンバーは全員頼もしいとは思っているし彼らであれば自分がいなくても何とかなるとは思うけれど。

「…………何より自分が足手まといみたいで嫌なのよ」

 仲間が強敵と戦っているかもしれないのに何も出来ないのは落ち着かない。――負傷している自分が出て行っても普段ほどの実力を発揮することも出来ず結局邪魔になることはわかっていても。

「それよりレン、あんただって任務がある筈でしょ。私に付き添う必要なんてないわよ、私も子供じゃないんだから」
「オトハさんは目を離すとすぐに無茶をしますから」
「そんなに手のかかる子供みたいなことしないわよ…………多分」

 親しい人が傍にいてくれるのは安心するのだけれど、なんて素直には言えない。