極東の外部居住区で両親を亡くし泣いている子供を見たことがある。アラガミが壁の内側まで侵入して逃げ遅れてしまったらしい。
子供を庇った親がアラガミに捕喰されてしまうというのは——このような言い方も良くないとは思うが、そう珍しいことではない。
神機使いでも何でもない一般人にとってはオウガテイルだって勝ち目のない脅威だ。神機使いでさえ油断すれば小型アラガミに捕喰され命を落とすことは割とある。
「悲しい思いをする人を増やさない為に戦っているわたくしとしてはあまり歓迎できることでもありませんけれど、ああいう子が将来的に神機使いになることもあるのでしょうね」
両親がいなくなったことをきっかけに神機使いを志した、というわけではないけれど現ブラッド隊長のノルンも境遇だけ見れば似たようなものである。
他にも極東支部所属の神機使いの中には幼い頃に家族をアラガミに殺されてしまった、自分だけが生き残ってしまったという経験をした者は少なくない。
こんな時代なのだから家族が今も生きていて幸せに暮らしている、なんてほんの一握りだろうけれど。生きていたとしてもアラガミに怯え、僅かな配給に頼って不安な日々を過ごしている人は多いと聞く。
「ジュリウス」
「どうした」
「わたくしはもう、守られるだけのか弱い存在ではありませんのよ。だからあなたのことも——死なせませんわ、絶対に」
初めてアラガミと戦ったときはオウガテイルに神機を振りかざすことさえ怖くて、帰投してからも震えが止まらなかった。
今はもうあの頃の弱く頼りない小娘ではない。……頼りになる存在だと胸を張って言えるほどでもないけれど、そうなりたいとは願っている。