ゆめかうつつか

*レン主♀前提


最近は時々、懐かしい夢を見るのだ。
錯乱したアリサがリンドウを教会の中に閉じ込め、彼を助けることも出来ないまま逃げ帰ってしまったあの日のこと。
リンドウの腕輪が発見され、彼の死が確定的になったこと。そして彼がアラガミ化しながらも生きていた現実。
彼を助けるために導いてくれた不思議な雰囲気の「新人」の存在。それらの記憶を夢に見る。
決して楽しい夢ではないが、そんな夢を見るのは嫌いではなかった。

「言ったことあるかもしれないけど、私10歳より前の記憶がないから。だからこそ嫌な記憶でも忘れたくはないし夢で繰り返すことで覚えていられると思えば悪い気はしないのよね、意外と」
「なるほどな」

リンドウは配給ビールを飲みながら息を吐いた。
彼の人間のそれとは違う腕を見る度にアラガミ化してしまった彼を救う為に力を貸してくれた「新人」のことを思い出す。

「私がリンドウの神機に触れてもそこまで侵喰が進まなかったのもレンのお陰なのかなあ、と思うと私の知らないところで守られていたみたい」
「寂しいのか?」
「まさか。これでお別れだなんて思ってないし、私まだまだあいつに言いたいことがたくさんあるのよ」

確かにあの日以来、彼――レンが姿を見せることはない。彼にもう一度会えるなんて確証はないが、しかし再び彼に会えるような気がしていた。
リンドウが「近いうちにまた会おう」なんて言ったからだろうか。否、たとえその発言がなくとも信じていただろう。
相手がオトハとリンドウの記憶の中にしか登場しない、不思議な存在である彼だからこそ。

「サクヤとの子供が出来たら相棒だったレンの名前をつけるんでょ? 当然、私も会わせてもらえるのよね」
「子供なんてまだまだ先の話だけどな」
「リンドウの子供だから大人になってビールとか好むようになったらどうしよう。初恋ジュースばかり飲むような子に成長するよりはましかもしれないけれど」
「なんか母親みたいだな」
「そんな冗談ばかり言って、サクヤに怒られても知らないわよ」

自分とリンドウの記憶の中にレンがいることにとても安心した。