となりで

ただ、彼がいつもより不安そうで心配だったから。
気付けば彼を——ジュリウスを抱きしめていた。自分でもどうしてこんな行動に出てしまったのだろう、と後悔する。
年上の男性、それも上官に対して失礼かもしれないけれど母親や姉のような心境だったのかもしれない。
冷静になって考えると咄嗟に取った自分の行動はとても恥ずかしいけれど。

「ええと、その、ごめんなさい……」
「いや……」

ジュリウスも驚いたのか、それ以上の言葉はない。
もしも自分が彼と同じ立場だったら驚きのあまり声も出ないかもしれないし抵抗してしまうかもしれないとノルンは苦笑する。
流石に悪いことをしてしまったか、と体を離そうとするとジュリウスの腕が背中に回された。

「その……わたくしにこうされるの、嫌ではありませんの?」
「別に、嫌だとは思わない。確かに最初は驚いたが」
「……でしたら、もう少しだけこうしていてもいいかしら。休息、ですわ」

こくりと頷いたジュリウスを見て、今までより少し腕に力を入れる。
自分の顔なんて見えないけれどきっと今の自分は耳の先まで真っ赤なのだろう。
ジュリウスが不安そうで、思わず抱きしめてしまった筈だったのに、こうしていると落ち着く。
彼がこの状況をどう思っているのかは分からないけれど、嫌ではないと言ってくれただけで十分だ。
背中に回されたジュリウスの腕も少し、力が強くなったような気がする。たったそれだけのことが何故かとても嬉しい。

「……わたくしは、あなたの力になりたいのですわ。少なくともわたくしがブラッドである間は」

ずっと力になりたいだなんて贅沢は望まないけれど、せめて今だけは。