悪夢にうなされ目を覚ました。親しい人達がアラガミに喰い殺され、自分だけ生き長らえてしまう夢。
夢の中の自分は恐怖からか金縛りにあったかのように動けず、仲間がアラガミの餌となるのを見ていることしか出来なかった。
情けない話ではあるが、そんな悪夢で目を覚ましてしまってから不安で眠れなくなってしまったのだ。
明日も予定が入っており、寝ておかなければ支障をきたしてしまう可能性があるのは分かっているのだが。
「……で、俺の部屋まで来たわけか」
「こ、こんな夜中に異性の部屋を訪ねるのは迷惑だと思いますし悪夢のせいで怖くて眠れないなんて情けないですけれど……」
本当は同性であるシエルやナナを頼ることが出来れば良かったのだが、年下の女の子に頼るなんて、と自分の中のちっぽけなプライドがそれを許さなかった。
もちろん異性であるジュリウスを頼ることもノルンにとって同じくらい——否、それ以上に勇気のいることである。
彼のことを信頼しているので何かされてしまう心配はしていない。だが、人を頼ることがどうしても苦手なのだ。
先程もノルンはとても言いにくそうにしていた。今もどこか不安そうな顔をしている。
「そ、その、もちろん朝には出て行きますし……床で構わないので、ジュリウスのお部屋で休ませて、もらえないかしら……?」
「……床だと大して休めないだろう」
「や、やっぱり迷惑、ですわよね……」
「誰もそんなことは言っていない」
余程怖い夢だったのか、未だに少し震えているように見える彼女に対してお前は床で寝ろ、なんて言える筈がない。
震えていなかったとしても自分だけベッドを使いノルンに床で寝てもらうなんて出来ないのだが。
「お前がベッドを使うといい」
「そ、そんなこと出来る筈ないじゃありませんの!」
部屋の主を他のところで寝かせて自分だけベッドを使うことは出来ないとノルンは反発する。
元々、ブラッドに入隊する前は床より寝心地の悪い場所で眠っていたこともあるのだ。
「わたくしだけがベッドで眠るわけにはいきませんから、その、せめて一緒に使うべきだと」
言ってしまってから後悔する。二人で使うには少し小さく、密着しなければならないだろう。
恐怖とはまた違う意味で眠れなくなるような気がする。それにとても恥ずかしいことを言った。
羞恥でみるみるうちに赤くなる顔を隠すように視線を落とすが無駄な抵抗である。
「……っ、自分の言葉の意味を分かっているのか?」
「わ、わたくしは、あなただから言いましたのよ……! 他の殿方にはこんなこと言えませんわ……」
仕方ない、と諦めてノルンをベッドに手招く。自分から言い出したくせに真っ赤になっている彼女が愛おしかった。