嗚呼、彼女はまた無理をしている。
ミッションを受注して出撃ゲートへ向かう彼女――オトハさんを見て、僕は溜め息をついた。
いつもより顔色の悪い彼女がアラガミと戦うなんて無謀だ。たとえ相手が小型アラガミだったとしても、万全ではない状態で戦えば判断ミスで命を落とす可能性だってある。
貴方は入隊当初から無茶ばかりだ。
僕が当時の貴方を知っていることを当然ながら貴方は知らないのだろうけれど。
「オトハさん、顔色が悪いようですが……」
「……そう? 私は何ともないし、それより今からコウタと任務に行かなきゃならなくて急いでるんだけど」
接触禁忌種が現れたらしいから急いで討伐しないと、なんて彼女はさらっと恐ろしいことを口にした。
少なくとも僕には彼女が大丈夫そうに見えないし、普通の神機使いでは歯が立たない接触禁忌種に、いくら第一部隊のリーダーとはいえ万全とは言えないオトハさんが挑むなんて死にに行くようなものだ。
それとも、第一部隊のリーダーになるような人間はみんな無謀なのだろうか。
「言ったでしょう? 医療班に配属されたって。僕の目は誤魔化せませんよ」
「誤魔化そうとしているつもりはないんだけど。敵はアイテールだけみたいだからすぐに終わるし」
「……アイテールだけ、って……接触禁忌種が通常のアラガミより強い力を持っていることは貴方も知っているでしょう?」
「だからこそ、私を含めた第一部隊で対処すべきだと思う。この極東支部で一番の戦力だから」
何がだからこそ、だ。
体調の悪そうな貴方が行ったって言い方は悪いけれど足手まといになるだけだ。
第一部隊ほどではないかもしれないが防衛班も頼りになるし、オトハさんがいなければどうにもならないミッションは恐らく少ない。
もう少し仲間に頼るべきだ。ここはベテラン神機使いも多く集まる最前線なのだから。
「……人はあまりにも脆い。貴方の代わりはいないんですよ」
「私だけが休んでいるわけには行かないの。レンだって分かるでしょ」
「貴方の場合、休まなさすぎだと思いますが」
どうやら僕が言っても聞く気はないらしい。
「……仕方ないですね。では、せめて僕を同行させてください。戦力になるか分かりませんけど、僕なら回復弾も使えますから」
近くでサポートするしかない、か。彼女は妙なところで頑固だった。