料理があまり得意ではない自覚はある。
今まで料理をする機会もなかったのだから当然と言えば当然なのだが、どうしても美味しそうな料理にならない。
焦げてしまっていたり生焼けであったり――決して食べられないわけではないのだが人に振る舞えるレベルにはならないのだ。
「ううん……ムツミから教わった“おにぎり”くらいならさすがに作れますのよ。慣れていないので少し……いえ、かなり不格好ですけれど」
大切な人の為に料理を作れたら楽しそうだと思う。練習は、しているのだ。
簡単なものならムツミに教えてもらっているし、そのお陰で最初に比べたら見た目も味も格段に良くなった。
ムツミにはもう少し練習すれば出来るようになると励まされたが、もう少しが遠く感じる。
「まあ、何事も努力が肝心だからな」
「それはそうなのですけれど、こんなご時世にわたくしの練習で食材を無駄にするわけにはいかないですもの」
もちろん、どれだけ出来が悪くても自分で作ったものは責任を持って自分の胃袋に押し込んでいる。
いつか任務で疲れて戻ってきたブラッドの為に料理を振る舞ってあげたいと、そう思って始めたことなので諦めるつもりはないが。
「ま、まだジュリウスに食べてもらうわけにはいきませんけれど……そのうち、振る舞いたいですわ」
「俺は気にしないが」
「あなたが気にしなくてもわたくしが気にしますわ! お腹を壊す……のはさすがに言い過ぎかもしれませんけれど、お世辞にも美味しいとは言えませんから」
まさか惹かれている相手にあまり美味しくない料理を振る舞える筈もない。
疲れて帰ってきたのにあんな料理を出されたら、疲れが取れるどころかきっともっと疲れてしまう。
でも、いつか、人並みに作れるようになったら自分の料理を食べてもらいたいと、そんなことを思った。