鎮痛剤

怖い夢を見たわけでも、任務で危ない目に遭ったわけでもない。
それなのに何故自分はジュリウスに抱きしめられているのだろうか。混乱した頭で必死に考える。
抱きしめられることが嫌なわけではない。それどころか好きな人に抱きしめられているのだから嬉しいくらいだ。
少し、否、かなりドキドキしてしまい落ち着かないのだけれど。

「あの、ジュリウス……嫌なわけではないのですけれど、これはどういう……」

ノルンの言葉に、ジュリウスは不思議そうな顔をした。まるで理由が必要なのかと聞きたそうな表情。
そもそも上官と部下であると同時に恋人同士なのだから何らおかしいことではない筈だ。
ジュリウスのほうからこんなことをするとは思っていなかったから心の準備も出来ていなくて驚いてしまった。きっとそうだと自分に言い聞かせる。

「そうだな……強いて言えば疲れを取る為だろうか」
「……これであなたの疲れは取れますの?」
「ああ」
「まあ、わたくしもあなたに抱きしめられていると安心しますけれど……」

先程までグレムやラケルと話し込んでいたようだし、隊長という立場上ストレスも多いのだろう。
彼が少しでも休めるのならもう暫くこの状態でもいいか、なんて思ってしまう自分もジュリウスには相当甘い。

「ジュリウス、わたくし少しはあなたの役に立てていますの?」
「急にどうしたんだ」
「……何でもないですわ」

少しでも忙しい彼の支えになれていたら嬉しいと、そう思った。