料理はまだ経験が足りないけれども、紅茶を淹れることは自信がある。
従者であるミルトニアや自分と同じく紅茶が好きなエミールには及ばないが、そこそこ上手に淹れられる、と。
それでもやはり自分が淹れた紅茶をジュリウスに出すのは少し勇気がいる。
好きな人に料理を振る舞うのも、同じような気持ちなのだろうか。
「ジュリウスの心が少しでも休まれば、と思って淹れたのですけれど」
「ああ……いただこう」
ジュリウスの為に紅茶を淹れるのは初めてではないのに、いつになっても慣れそうにない。
この時間が嫌なわけではなく、寧ろ好きなのだけれど、緊張してしまう。
カップが彼の口に運ばれるその姿を見て心臓がドキドキと騒がしくなった。
「その、最近ジュリウス忙しそうですから……あなたの好きそうなものを選んだつもりなのですけれど」
「……ノルンの淹れる紅茶は、飲むと気持ちが安らぐ気がするな」
ジュリウスの好みを全て把握しているわけではない。今日の紅茶が彼の口に合わなかったら、と不安だったのだがその言葉を聞いて安心する。
任務でもジュリウスの力になりたい。けれど普段の生活の中でも、彼の力になれることがあれば嬉しく思う。
これほどまでにジュリウスに惹かれてしまっている自分に我ながら呆れた。
「……ジュリウス。わたくしは頼りない副隊長かもしれませんけれど、どういう形だったとしてもあなたの役に立てたら幸せですの」
小さな声で、ぽつりと呟いたそんな本心が彼に届いたのかは分からないけれども。