純白の願い

例えば朝起きて。慣れないながらに包丁を握り、彼の為に朝食を作る。
メニューはシンプルに食パンと目玉焼きかしら? なんて。完成したそれを並べてから彼を起こすのだ。おはよう、と。
彼の弁当を用意して、そっと手渡す。いってらっしゃい、と見送れば行ってきます、という優しい声が返ってくるのだろう。
料理はあまりしてこなかったから今日は失敗してしまった、とか作れる料理が増えた、とか。そんな話をしながら笑い合って。
今日もお疲れ様、おやすみ、と。何でもない日常を繰り返す。
——憧れていたのだ。そんな平穏であたたかな家庭に。庭で子ども達が走り回っていて、それを見て幸せだと実感する。
アラガミが存在している以上、そんなに穏やかな日々は送れないと分かっているけれど。

「ねぇ、ジュリウス。……本当に、わたくしでいいのかしら?」

ノルンは訊ねる。ジュリウスはノルンでなければ駄目だと言った。即ち、本当の家族になりたいと。
嬉しい。心の底から思った。同時に、彼を縛り付けてしまうことになるのではないか、と。何より彼にはもっと相応しい女性がいるのではないかと思ってしまったのだ。

「それとも、ノルンは嫌なのか?」
「まさか。あなたが望んでくださるのならば、わたくしの残りの人生は全てあなたに」

それこそが自分の夢であるというのに、嫌なわけがない。
ずっとこんな未来であれば、と願い、けれども諦めてきたことだ。ジュリウス、と名前を呼べば彼は首を傾げた。

「ありがとう、わたくしに幸せをくれて」
「どうしたんだ?」
「ジュリウスがくれた、たくさんのものには及びませんけれど……いつかジュリウスがわたくしを選んで良かった、と思えるよう頑張りますわ」
「頑張る必要はない。そもそも俺はお前が特別なことをしなくても、後悔するような選択はしていないからな」

幸せを噛みしめるってきっとこういうこと。小さく愛しています、と呟いてはにかんだ。