「ジュリウス、誕生日おめでとう御座います」
彼がこの世に生を受けた日も、今日のように太陽が照りつける暑い日だったのだろうか。
ジュリウス・ヴィスコンティの誕生日はブラッド隊長を務めている少女にとって何よりも大きな日だった。
「ああ、ありがとう。覚えていたんだな」
「それは、その、あなたが生まれた日ですもの。ジュリウスはたくさんの方から声をかけられるでしょうから、お祝いなんて聞き飽きたかもしれませんけれど……」
今朝もジュリウスに誕生日おめでとう御座います、と声をかけているアナグラの職員を何人か見かけた。
恐らくは何度か一緒に仕事をしたことがある、程度の関係だろう。
元ブラッド隊長、今もブラッドのメンバーとして難度の高いミッションを受けることの多いジュリウスと仕事で関わったというアナグラの研究者や技術者も少なくはないのだと思う。
「他でもないお前からの言葉だ。聞き飽きた、などと思う筈がない」
「……そうだったら嬉しいですわ、とても」
自分とジュリウスとの関係なんてブラッドの隊長と隊員、元副隊長と元隊長、というだけのもの。
決して恋人同士だとかそのような関係ではないのだが、ジュリウスの「他でもないお前」という言葉に心臓は大きく跳ねた。
きっとジュリウスは深い意味もなくその言葉を選んだのだろうし、その言葉にかき乱されている自分のほうが普通ではない自覚もあるのだけれど。
「ところで、ジュリウス。この後お時間は御座いますの?」
「時間か……今日は今のところ予定もなかった筈だが」
「でしたら少しだけ、あなたの時間を頂きたいのですけれど……」
「? それは構わないが……」
せっかくのジュリウスの誕生日なのだ。一瞬でも二人でゆっくりと過ごせたら、なんて邪な気持ちも若干あった。
豪華な食事も素晴らしいプレゼントも用意できていないけれど、ジュリウスに喜んでもらいたいといつだって考えている。
手を繋ぐことも、キスをすることもない、恐らく彼にとっては妹のような存在でしかないけれど、特別な存在でありたいと願ってしまう。