メランコリア

*ジュリ主♀前提


極東に戻ってきて暫く経つが、そういえば少女が誰かを頼ろうとする姿を見たことがない。
彼女、ブラッドの隊長であるノルンはいつも率先して難度の高い任務を引き受ける。
確かに彼女は強い。激戦区である極東で部隊を率い戦う少女を見て、きっと誰も入隊1年目だとは思わないだろう。
3年前、第一部隊を率いていた少女にとても似ている。見た目はノルンほど気を遣っていなかったし性格も素直ではないけれど、根っこの部分はそっくりだ。
若くして隊長という立場になってしまった彼女は仲間を頼る術さえも知らないのかもしれない。
望んで隊長になったわけではないだろう。彼女にとっての隊長がブラッドを抜けて、副隊長を任されていた彼女がその穴を埋める形で隊長となった。

「ねぇ、リンドウさん」
「どうした?」
「リンドウさんは……その、アラガミ化から生還したんですわよね?」
「んー、そうだな。前にも話したが、コウタの同期に救われた」

ノルンはちらりとリンドウの腕を見る。一度見ただけではあるが、彼の腕は人間のものではなかった。
アラガミ化からの生還。本来なら有り得ないことで、事実リンドウのことは奇跡なのだと思う。

「もしも、もしものことですけれど……わたくしもコウタの同期の方のように諦めなければ、奇跡は起こると思います?」
「まあ、そうだなあ……」

螺旋の樹に一人で残り終末捕喰を食い止めているという彼女の「隊長」のことを言っているのだろう。
少女が無茶をするのも、その隊長の為なのかもしれない。本当は辛い筈なのに、彼の為に心を押し殺して戦う彼女の姿が痛々しいくらいだ。

「お前さんが信じ続ければいつか会えるさ」
「本当に?」
「俺だってもう駄目だと思ったことはあるが、アラガミ化しながらこうして生きてるんだ」

こんなにも想われているのだ。二度と会うことすら出来ないなんて残酷なことはあってはならない。
リンドウはふーっと息を吐き、ノルンの頭をぽんぽんと叩いた。
彼女の願いは簡単に叶うものではないだろうけれど、だからこそもっと人を頼ることを覚えるべきだ。
少女もまた、慕われているのだから。