「授業参観……」
フィムが今度授業参観があると話していたのは数日前のこと。
授業参観。保護者が学校で生徒の授業風景を見ることの出来る日。そういう知識はある。AGEになる以前も、なってからも、まともな教育を受けていないイノリ・ペニーウォートにとって学校がどんな場所なのかもはっきりとは分からないしイメージは湧かないのだが。
来てほしいな、と言っていたフィムの願いは叶えてやりたいし彼女の「お母さん」としてフィムの学校での生活も気になる。
何より親のいない幼少期を過ごした身として、せめてフィムに寂しい思いをさせたくない気持ちがある。
オーナーであるイルダやオペレーターのエイミーも「仕事のことは気にせず、行ってあげたら?」なんて背中を押してくれた。
「…………ユウゴ、相談があるのだけど」
「何かあったのか?」
「大したことではないのだけど、その、授業参観って……どんな服を着ていけばいいのかと思って」
授業参観の前日。そういえば自分は碌な服を持っていないということに気付いた。
戦闘のときに着ているような服では場違いな気がするし、戦闘とは無縁の子供たちを怖がらせてしまうかもしれない。
アラガミとの戦いで破損したり汚れたりしてしまっている服を子供たちに見せるのも気が引ける。しかし生まれてから真っ当な生き方を出来なかった自分が小綺麗な服を持っている筈もない。
——クレアやルルならもう少しまともな服を持っているだろうか。サイズが合うか分からないけれど。
「……それは俺よりクレアにでも相談したほうがいいんじゃないか?」
「私もそう思うけど……ユウゴはハウンドの大黒柱みたいなものだし、フィムのお父さんみたいなものだと思うから、意見を貰っておいたほうがいいかと」
「そこからなんでフィムの父親って発想に至るのかまるで分からないんだが」
「私がユウゴのことお父さんみたいだな、って思ったから」
正直に言えば、普通のファッションがよくわからない。
AGEである自分に碌な衣服が支給される筈もなく、服が破れてもテープで補修して何とか着られるように保ってきた。もちろんそれはユウゴも同じであると、理解はしているけれども。
「……クレアに何着か服の候補を考えてもらって、その中からお前とフィムが可愛いと思うものを着ればいいんじゃないか?」
「なるほど。……私は感覚がずれている自覚もあるし、フィムが気に入ったのを着ればいいのね」
「………………不安だ」
授業参観、なんてまるで本当に母親になったよう。
自分が死ぬまでに母親のようなことをする日が来るとは思わなかった。
「ユウゴも……一緒に行きましょうね、フィムの授業参観」
だが、こんな生活も悪くはない。