クリスマス、なんて今まで特に楽しい思い出もなかった。家族や友達、恋人と一緒に過ごすのだとはしゃぐ周りの気持ちも理解出来なかったし、理解するつもりもなかったのに。
「今なら、少しだけ、わかる気がする」
大切な人と過ごしたいと思う、その気持ちが。
フラーウムにとって世界で一番大切な、初めて執着したその相手は恋人でも家族でもなく、一方的に想いを寄せているにすぎない。少なくとも、フラーウムはそう思い込んでいる。
普通の人が聖夜に意中の相手とどのように過ごしているのかも知らないけれど。
「何がわかるの?」
「……別に、大したことじゃないしフリージアはボクの独り言を盗み聞きするなんて趣味が悪い」
「ふうん」
今まさに考えていた相手に独り言を聞かれていたとは思わなくて、つい意地の悪い言い方をする。
内心、心臓はバクバクと音を立てているくらい動揺しているのだけれど。
「……別にボク達にとって何が変わるってわけでもないのにね」
フリージアはボクの気持ちなんて知らないんでしょう? と、心の中で呟いた。
*おぼろ様宅フリージアくんお借りしました!
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クリスマス。故に慎ましくではあるけれど、少しそれらしいことをしてみないか、と数日前に提案して。
二人きりではあるけれどケーキを用意してパーティーでもしよう、という話になった。家族であり、ましてや妹でもある相手にパーティーを提案するだけだというのに、それを言い出すのは酷く緊張してしまったけれど。
「その、桜茉。……これを」
『兄さん、これ……』
桜茉のスケッチブックにすらすらと綴られた文字。言葉を失った彼女の意思疎通の手段。
少女の好むものなどわからない中で――素直ではないから知り合いに相談するだけの勇気もなく、必死に考えた妹へのクリスマスプレゼント。
他人との意思疎通に「文字を書く」という手段を用い、また絵を描くことも好きな彼女に必要かと思い買ってきたペンを手渡せば、桜茉は頭上に疑問符を浮かべた。
「こ、これはたまたま文房具屋に立ち寄ってお前に必要だと思って買ってきただけで別にそれ以上の意味は」
『……ありがとう、兄さん』
決して女の子らしく可愛いデザインのペンではないけれども、彼女に持ち歩いてもらえるならば幸せだと。
*こばと様宅桜茉ちゃんお借りしました!