「フウ!」
「…………菖蒲」
聞き慣れた、明るく元気な声でフラーウムの意識は覚醒する。
少し、眠っていたようだ。嫌な夢を見た。嫌な夢、というと語弊があるかもしれないけれど、あまり夢に見たくはない記憶。
一族から除け者にされ、それでも努力し、とある王子の側近として迎え入れられた日。
初めて、ヒトらしい扱いを受けたのだ。決して恋愛感情ではなかったけれど、その王子は自分のちっぽけな世界を変えるきっかけをくれた大切なヒトだった。
「うなされてるように見えたです。悪い夢、見たですか?」
「……別に。ちょっと昔の夢を見ただけ」
「ならいいです。ミーのお菓子食べればきっとフウも元気になるですよ!」
「そうやって、菖蒲がお菓子食べたいだけでしょ。……仲間だし、付き合うけど」
陰湿で薄暗く、何の魅力もなかった世界を変えてくれたあの人が言っていた。
確かに残酷なこともあるけれど、本当はもっとずっと美しいのだと。
(まあ、確かに今のボクはあの頃とは比べものにならないくらい、充実しているけれど)
こんな世界を生きるのも、悪くはない。