何もかもが退屈な世界の中で「彼」だけが、希望の光だった。
それこそ彼に認められたならば他には何もいらないと思えるほどに、大きな存在だったのだ、少なくとも自分には。
「お前は兄に何をしたんだ」
「そうねぇ……元から仲良しとは言えなかったけれど、一番は兄さんに出来ないことがアタシには出来てしまった、ってところかしら」
ディムはへらりと笑う。
彼の表情は理解に苦しむ、とマゼンタは吐き捨てた。兄に嫌われ、あまつさえ暴力まで振るわれ、それでも兄に好かれようと自分を殺していくなんて、狂っている。
とはいえマゼンタも、そして仲間であるブラウンやルロッド、フリックにも少なからず狂っていると思われても仕方のないような行動を取ってきた経験があるので決して口には出さないけれど。
ふー、と息を吐いたマゼンタとは対照的にディムはどこか楽しそうだ。
「まあ、兄さんは今もアタシを認めてはくれないけれど、こんな形の弟を受け入れろってほうが難しいだろうし。……ところでマゼンタちゃん、アタシお手製の蜂蜜ドリンク飲まない?」
「……結構だ。お前のことだから妙な味のきのみや薬草でも入れてるんだろう。健康にいいものを掛け合わせたらもっとよくなるだなんてお前の発想は子供か」
「あら、良薬口に苦しって言うじゃない? 体にいいものほど飲みにくいものよ」
「だがその蜂蜜ドリンクとは思えない青い液体を口にする勇気はない」
お互いに、変わり者だという自覚はあるのだ。