「……またか」
マゼンタは大きく息を吐く。
視線の先には伸びきった男が数人。恐らくはマゼンタを王族と知った者達が金目のものを目当てに襲いかかってきたのだろう。
——残念ながらマゼンタも幼い頃から自分の身を守る守れるよう鍛えていた為に傷ひとつつけられなかったようだが。
そもそも出歩くのに高価なものを持ち歩くほど馬鹿ではない。せめて護衛をつけろと言われそうだが、マゼンタは護衛を信用していない。
「マゼンタ様ー!」
後方から響く聞き慣れた声に再び溜息。
ご無事ですか、と駆けつけてくる執事のジルベルトに呆れる。そんなに危険な目には遭っていない、筈だ。
彼の目を盗んで出てきたつもりなのに一体何処で嗅ぎつけたのだろう。慕ってくれるのが嫌なわけではないが、少し恐怖を感じてしまう。
「全く、ジルベルトは私がこのようなクズ共に負けるとでも?」
「そういうわけではありませんが」
「大体お前は何故私の居場所を知っているんだ。誰にも告げずこっそり抜け出したというのに」
「マゼンタ様の行き先くらいお見通しです」
嗚呼、こいつはそういう奴だったなとマゼンタは頭を抱えた。
尤も彼のそんなところに助けられた機会も多いのでやめてくれとまでは言えないのだけれど。
「もしもマゼンタ様が野党にでも襲われて怪我をしたと思うと不安で不安で」
「…………私はそこまで弱くないが」
こんな執事でもいなくては困るのだから、どうやら自分も少し変わったらしい。
*琴音様宅ジルベルトさんお借りしました!