滅んだ世界の片隅にて

「わかんねぇんだよな、お前の家」

マウは息を吐いた。
ファネスから聞かされる彼の家庭は歪んでいると、温かい家庭を知らぬまま育ったマウにも分かる。無条件に他者を嫌い、関わりを絶とうとする。その為ならば身内での婚姻も当然だという。
他人の家にとやかく言うつもりはないが腐っているような気がする。それとも普通の家庭はこれが当たり前なのだろうか?
——マウは施設で育てられた。必要最低限の食事と教育を受けて。決して恵まれた環境ではないと思っていたが彼のような家庭で育てられるよりは良いのではないかとすら思う。

「とは言ってもな、この歳まで外の世界を知らずに育ったんだ。俺にとってはこっちが常識でしかない」
「……20年も、な。オレには理解しがたいね」
「お互い、世間の言う普通の家庭は知らないってことだけははっきりしているけどな」
「違いねェ。そういう意味でオレとお前は似ている。オレはお前ほどいい奴じゃないが」

ファネスに「いい奴」と言われたときのことを思い出したのかマウは顔をしかめた。
お互い、澱んだ狭い世界しか知らないからこそ一緒にいて気楽なのかもしれない。狭い世界で受けられるなりの幸せは享受していたけれども。