淡く光る

元々人間であったこと。光を意味する名を与えられていたこと。それだけは確かに覚えている。
しかし両親の名前も顔も、家の場所も、まるで抜け落ちてしまったかのように記憶からなくなっていた。
自分が何者なのかも分からない、なんて。怖くなかったといえば嘘になるけれど、くよくよしていても仕方ない。自分は案外前向きなのかもしれない。
記憶を失って全く違う生き物になってしまったと言えば悲壮感が漂うかもしれないけれど、この生活も悪くはないのだ。

「エルバ、早くしないと置いて行くわよ」
「ま、待ってよルーチェ……! ここは水タイプが多いから、一人で先に行くのは危ないって!」
「私が危なくなっても、あなたが私の背中を守ってくれるんでしょう?」

水タイプが多く生息するダンジョンの最奥の調査。ペラップから言い渡された本日の仕事である。
炎タイプだから水は苦手、の筈なのだが元が人間だった為かあまり水への恐怖はない。とはいえ水の攻撃を食らうと痛いしもちろんダメージも大きいので出来れば自分から戦いたい相手でもないけれど。
偶然知り合って、成り行きで一緒に探検隊をやることになってしまったエルバだが、探検のときの相性は悪くない気がする。

「ルーチェの背中を守る、って言われても……」
「エルバは自分で思っているよりも優秀だし……これでも頼りにしてるんだけど」

……もう少しだけ、彼に自信がつけばとも思ってしまうけれど。


*時間軸はプリムラ結成間もないくらい