無自覚のこい

私はただ、彼を——そして彼の生きる世界を守りたかった。
その為ならばこの命も惜しくないと、そう思えるほどに。

「……シキには指一本触れさせない。私が、私が初めて自分の意思で手助けしたいと思ったの。この身がボロボロになったとしても後悔はない」

やめて、というシキの悲痛な声を無視する。
敵は複数。此方はシキはもう戦える状態ではないし本音を言えば私も立っているのがやっとの状態。とても戦える状況ではない。
ふっかつのタネは底をついてしまったし木の実も殆どない。手元のアイテムでこの場を切り抜けるのに有用なものもなさそうだ。
あったとしても敵の動きを封じてシキを抱えて逃げるだけの体力が私にはないからきっと無意味だろう。

「……シキ、ごめんね。君を助ける手段が私には分からないけれど、敵の狙いはきっと私だから」

私がニンゲンだから、敵は私がいる限り追いかけてくる。せめて私がシキから離れたら彼が襲われることはなくなる、筈だ。
どうか私を忘れて幸せに生きてほしい。

「メル……駄目だ、メルヴィル……っ」
「バイバイ」

私が一人、敵の下へ行けばいい。
シキを救う為に唯一私に出来ること。さようなら、シキ。私は君に恋をしていた。