感情の名前

メルの使命はこの世界を救うこと。
その役目が果たされた今、彼女が此処に留まる理由がなくなった。メルは何も言ってくれないけれど、きっと、近いうちにボクらは二度と会えなくなる。
仕方ないことだと理解はしている。メルは異世界から来たニンゲンで、ボクはそんな彼女と偶然出会っただけ。メルにも家族や友達がいて、彼らはメルの帰りを待っているかもしれない。
家族も友人もいないまま、一人で生きてきたボクのわがままでこの地に彼女を縫い止めておくなんて出来る筈がないのだ。

チクチクと胸の奥が痛む。
メルと出会うまではずっとひとりぼっちだと思っていたのに、いつからボクは贅沢な望みを抱くようになったのだろう。

「ねぇ、メル。ボクは——」

この感情の名前をボクは知らない。……否、気付いてはいけないような気がする。

「ううん、何でもない。ボクとメルはずっと友達だよね」
「——変なシキ。でも私も、そうであれば嬉しい、と思う」

いつか別れの日が来ても、ボクは笑って見送るんだ。