女が苦手だったあいつに女の子の恋人がなあ、なんて言ったのは誰だっただろう。
確かにニルギリは女性があまり得意ではなかったし恋人が出来た今だって平気になったわけじゃない。恋人以外との接触は苦手なままであるし恋人でさえ不意打ち気味に触れられるとどうしても反射的に逃げてしまう。
そんな奴にどうして恋人が、と言われても困る。ニルギリ自身、どうしてこうなったのかは自分でも分かっていないし、逃げ回っていても彼女が特別な存在であることは紛れもない事実なのだ。
「ねー、ニルギリ、何をお願いするのー?」
「……何を、と言われても願い事なんてそう他人に教えるものでもないと思いますが」
本日は七夕、という行事らしい。
この辺りではあまり一般的な祭りではないが七夕が一般的な地方の店主が経営しているらしい店の前は短冊が吊るされた笹が出されている。
七夕についての説明と客が自由に願い事を書ける短冊もご丁寧に用意されており物珍しさからか思わず立ち止まる人たちもちらほら見かける。
せっかくだから自分たちも願い事を書いていこう、と言い出したのはリュエルのほうだ。急に言われても自分の望みはすぐに思いつかないのだが。
「女性嫌いを克服するとか?」
「何でですか、嫌ですよそんな願い」
「嫌なんだ」
「まあ、確かに克服すべきかもしれませんが……その、リュエル以外の女性とあまり仲良くなりたいとは思いませんし……」
少なくとも今すぐに克服したいと思うようなことでもない。特に困っているわけでもないし……。
願い事、なんて些細なことくらいしか思いつかない。元々、ニルギリは欲がある方ではないから尚更だ。
まあ、そのうちもう少し彼女と普通に接することが出来るようになればとは思うが、誰かに願うようなことでもない。
「……そういうリュエルこそ、何か願いがあるんでしょう?」
「秘密ー」
悪戯っ子のように笑うリュエルに思わず溜息をついた。
嗚呼でもこんな日々が幸せで、続いてほしいと願うものなのだろう。
*こばと様宅リュエルちゃんお借りしました