「主よ……」
教会で手を組み祈りを捧げる。
聖職者となってからの日課。体調を崩していてもこれだけは欠かしたことのない日常の一部だ。
ステンドグラスが印象的なこの教会で過ごすようになってどれくらい経ったのだろう。
この街は平和だが、これから先も平和が続くとは限らない。残念ながら他国との戦争に巻き込まれる可能性がないとは言い切れない。それでも1秒でも長く平穏な日々が続くように、と祈ってしまう。
「神父さまはいつもお祈りしているのね」
「……ええ、私に出来ることと言えばこれくらいですから」
神父さま——そう呼ばれだシュネーは小さく笑う。この少女は母親に連れられ時折教会にやってくる子供だっただろうか。名前までは知らないが何度か見かけたことがある。
自分も彼女と同じくらいの年齢の頃には父親と一緒に教会に通っていたっけ、そう思うと少し懐かしい。
「ねぇ、神父さま。神父さまはかみさまって本当にいると思う?」
「神様はきっと存在していますよ。私は神様のお陰で今こうして笑って暮らせているのでしょう」
その神様は人によって違うのでしょうけれど。
聖職者という仕事をしている以上「いませんよ」なんて言える筈もない。実際に信じていないというわけでもないけれど。
「でも、かみさまがいるのなら世界は平和なんじゃないの?」
「ヒトが起こした争いに神様は関与しないのだと思いますよ——なんて、まだ難しいかもしれませんね」
「ふぅん、よくわからないけどかみさまにも出来ないことがあるってことかしら」
「出来ないこと、ですか。確かに神様にも不得意なことはあるかもしれません」
少女の予想が微笑ましくて、思わず笑みをこぼした。
神様はいつだって平等で、一個人に肩入れすることは殆どないのかもしれない。それでもこの祈りは届いていると信じている。