最初から才能がある奴には分からないだろう、と。そんな言葉を俺は何度も言われてきた。
自分より優秀な兄がいて、常に兄と比べられて才能がないと罵られてきた俺の気持ちなど考えたこともないのだろう。
優秀だった兄がプレッシャーに耐えきれず、ある日突然失踪したことで今まで散々無能扱いしてきた身内は手のひらを返したように俺に期待を寄せるようになった。
……子供ながらに馬鹿らしい、と思っていた。それでも反発せずにいたのは俺自身、料理が好きだったことと今まで馬鹿にしてきた人たちを見返してやりたい、という気持ちが強かったからに他ならない。
結果的に身内の望むレベルの料理を作れるようになったけれど、今度は天才だから努力せずとも作れるだけだなどと言われるようになった。正直、甘ったれるなと言いたい。
「高級料亭のような料理を作れ、と言っているわけではない。第一、レシピ通りに作ることすらしない連中にだけは言われたくないな」
子供の頃、祖父の認めるレベルの料理が作れるまで休ませてもらえないこともあったし叩かれて泣きながら料理をしたこともある。
疲労とプレッシャーとで血を吐きそうなことも何度もあった。他の人の何倍も努力しているという自負があるし、今でも努力し続けていると思っている。
「私はフロッティさんの料理は血の滲むような努力を感じますけれど、天才だから出来るだけだと思いたい方もいるのでしょうね」
私も天才と呼ばれた経験はありますもの、とおっとりとした口調で語るのはネイリング。
……嗚呼確か彼女は見た目こそ若いが何十年も騎士として活躍してきたのだったか。
「うふふ、私は自分の居場所を得る為に強くなっただけですけれど」
「……いつの時代も変わらない、と言うことかもしれないな」
血の滲むような努力を求めるつもりはないが、他人の努力を認めずに生まれ持った才能だと決めつける人たちには怒りを覚える。
同年代の子供たちが楽しそうに遊んでいる中で一人厳しい修行に明け暮れていた幼き日の自分を否定された気分になる。あの日々も今思えば悪いことばかりではなかったけれど。
「まあ、料理が上達したのは事実だし」
野菜を切るのも手こずっていたあの頃からすれば、随分と成長している。