本当は、怖いのだ。人間だった自分が、知らない世界で、期待されることが。
なゆたは少し特殊な経歴を持つ、ただの少女である。人前では強くあろうとしているけれど、震える体に鞭打って立っているに過ぎない。
それを知っているのは恐らく自分だけだろう、と天華は思った。
「ごめんね、なゆ。ボクはキミに辛い生き方を強いている」
天華が躊躇いがちになゆたの頭を撫でた。
こんな異世界に放り込まれて、泣き言を並べることもなく、常に凛としている。人に優しくて、それ故に自分の気持ちを抑え込んでしまう、そんな女の子。
彼女のことを大切に思う家族や友人もいるかもしれない。それでも会いたい、とは決して漏らさない。
「なゆはもっと自分の為に生きてもいいんだよ。……ボクが言える立場じゃないけど」
「大丈夫、わたしは今の生き方を後悔したことはないから。もちろん天華にも責任はない」
どうして彼女は甘えてくれないのだろう。彼女につらい道を歩ませている自分が甘えてほしいなんて言う権利はないのだけれど。