「いかないで」

『てんか! 待って! お願い、』

わたしを一人にしないで、と手を伸ばしたところで目を覚ました。
もう何度繰り返したかわからない、てんかとの別れ。毎日のようにてんかがいなくなる夢を見る。夢の内容は日によって違うけれど、最後は必ずてんかが消滅してしまうのだ。
夢の中でくらい、幸せな結末を迎えたっていいじゃないか。思わず自嘲する。彼のいない日々は想像していたよりもずっと精神的に堪えるものだった。

「なゆた、大丈夫?」
「……ジラーチ。別にわたしは」

大丈夫、とは答えられなかった。答えたところで嘘だと見抜かれてしまうだろうけれど。
ジラーチは願い事を叶える力をもつポケモン。ならばてんかに会いたい、という願い事を叶えてもらったらどうなるのだろう。
――叶ったとして、そんな力に頼ってしまうのは違うような気がした。きっとてんかも喜ばない。

「……調査団の仕事、たのしいから」
「…………最近のなゆたはあんまり楽しそうに見えないけど」

困ったような表情を浮かべるジラーチに申し訳なく思うけれど。
それでも、今はまだ心配をかけないよう自分にも周りにも嘘を吐くのは難しかった。