記憶の在処

てんかは太古のことを知っているんですよね。ふとそんなことを口にしたのはデンリュウだった。
太古の戦いに関して、セレビィが「時渡り」で見てきた話を聞いて知識としては知っている。ミュウというポケモンが中心となってダークマターに対抗していた、その中には一人の人間もいた、と。
星の並びでダークマターが停止したお陰で危機を免れたという知識は、間違っていたようだが。

「昔のなゆも、ボクも、もちろんダークマターのことも知ってるよ」

えっへん、と胸を張るてんか。
無邪気で良くも悪くも子供らしい彼が太古の戦いにおいて中心となった「ミュウ」の生まれ変わりだなんてあまり信じられないことではあったが。
ミュウは記憶を全てなくして、それでもダークマターを倒さなければという覚悟と使命を持っていた。太古から背負う宿命から解放されたてんかとして幸せになってほしいと話していたのはなゆただったか。

「でも、ボクは確かにミュウだったけど今はてんかだから、あんまり昔の話はしたくないかな」
「いえ、昔の話を聞きたいわけではありません。ただ、運命ってあるんだなと」

太古の世界で共に戦った人間の少女と、お互いに記憶がない状態で再会し、ダークマターを倒すという悲願を達成した。
きっと言葉では表現出来ないほどの深い絆で結ばれているのだろうと思う。
てんかは自分のことをミュウ――天華ではなく「てんか」だという。記憶を取り戻してからもてんかは何も変わらない。

「天華の夢は平和な世界を見ること、ボクの夢は世界地図を完成させること。てんかとしての夢は叶っていないから、ボクの未来はまだまだ続くんだ!」

少年の笑顔が眩しかった。