「……コノハナ」
「ん、なゆた。どうかしたのか?」
てんかが帰ってきた。コノハナも戻ってきた。
以前は当たり前だったこの光景に、少しだけ涙腺が緩む。わたしはこんなに涙もろかっただろうか。
人間だった頃の記憶は未だに戻らない――てんかの話ではわたしとてんかが自らの意思で過去の記憶を手放したらしいから当然かもしれないけれど、とにかく記憶がなくても幸せだと感じられる。
本当の家族もわからないけれど、わたしにとってはコノハナが本当のお父さんみたいなものだ。……お父さん、なんて呼ぶだけの勇気はない。憧れがないわけではないけれど。
「いろんなことがあった。正直コノハナを怖いと感じたこともある」
「う……今までのことを思えば仕方ねぇが、そうはっきり言われるとさすがに傷つくだど。もう少しオブラートに包めねぇか」
「違う。最後まで聞いてほしい」
もちろん、虚無の世界に送られたときは恨んだ。大事な家族にそんな感情を抱いたことは申し訳ないけれど、わたしは当時の自分を否定しない。
それはてんかがダークマターを受け入れたことさえ否定してしまうようだから。
「…… それでもわたしはコノハナが戻ってくれたことが嬉しいし、本当の意味で家族になれたように思う」
今までの優しさ全てが嘘だったとは思いたくない。
「だから、コノハナ。ただいま」
「……ああ、おかえり。なゆた」