「もぐもぐ……」
「なゆは見かけによらずよく食べるよね。ボクまでおなかがすいてくるよ」
「ん……ごちそうさま」
学校では問題児として扱われていたてんかだが、だからこそなのか料理が得意である。
よく言いつけを破っては罰としておじい――彼の親代わりであるアバゴーラに家の手伝いをさせられていたから、というのは本人談。
とはいえ自主的にやることは殆どないし手伝いも極力手を抜こうとする。そんな彼が自分の為に料理を作ってくれたのだ。
今日ここで死んでも後悔はない、となゆたは思う。相変わらず記憶はないが過去の自分はきっとてんかとこのような関係には至っていない。
仲間だったのも特別だったのも事実で彼への感情も恐らくは過去から続いているものだけれど、友達というよりは戦友という存在だった気がする。
だから料理を振る舞ってもらう、なんて経験はない筈だ。
「……てんかの作るご飯は好き。わたしは料理とか得意じゃないから」
「なゆの為ならいつでも作るよ。調査団にいるとボクが料理するまでもないかもしれないけど」
「それはだめ。てんかのご飯は毎日でも食べたいけど、その前にわたしが耐えられない」
「?」
決して彼と今以上の関係になりたいわけではない。今でも十分すぎるくらいなのに、これ以上を望んでしまうのは罪だ。
自分に記憶があったとしてもこのスタンスは変わらないと思う。てんかとは友達で、特別で、守るべき存在。戦う力のある友達が庇護対象なんて我ながら歪んでいると自嘲する。
てんかは過去をあまり教えてくれないから想像でしか分からないけれど、当時自分の力不足でてんかを失いかけたとかそんなトラウマがあるのかもしれない。
「てんかは何も知らなくていい。わたしが守りたい世界とてんかが守りたい世界はきっと根本的に違うんだ」
てんかが生きている世界を守りたいという気持ちはあるけれど、彼がいない世界なんて自分には何の価値もない。
救世主失格でも構わない。彼がいることが原動力になっている。