「てんか。わたしはキミのことが好き。学校に通っていた頃から、ずっと」
元々ニンゲンであるわたしは、てんかとは文字通り生きる世界が違う。ニンゲンであるという主張を誰からも信じてもらえず嘘つきだと邪険に扱われていたとき、問題ばかり起こして同じように邪険にされていたてんかだけはわたしと対等の友達になってくれた。
わたしがてんかのその優しい心に惹かれることはきっと必然だったのだ。わたしとキミに、どうしようもない隔たりがあることを理解していたとしても。
一瞬驚いたように目を丸くしたてんかは、わたしの言葉に嬉しそうに微笑んだ。ボクもなゆのことが好きだよ、とそれが当然であるかのように答える。わたしとキミの「好き」の意味は違うんだ、なんて伝えたところで理解はされないだろう。
——正直、この想いが報われたいと思ったことなど一度もない。わたしは友達になってくれたてんかのことを好きになったのだから、友達のままでいてくれたら幸せなのだ。
過去の、ニンゲンだった頃のわたしが当時のてんかのことをどう思っていたのかは思い出せないけれど、わたしの中に芽吹いたこの感情は今この場所にいるわたしだけのもの。過去のわたしが抱えていた感情を無意識に追ってしまっているだけ、ということはないと断言できる。
「なゆは時々むずかしい顔をするよね」
「……そう、なの?」
「うん。ボクにはなゆが何を考えてるのかまでは分からないけど……」
「大したことは考えてない」
わたしはこの命を賭してでもてんかを支えたいと、そのように考えているだけ。
なゆたという「ニンゲン」は元は今の自分よりもずっと大人だった。記憶がないわたしは自分のことをその程度しか覚えていないけれど、大人としてまだ幼い子供であるてんかを守らねばならないと思っている——本当に?
「……てんかは、」
「ん?」
「てんかはこれから先も、ずっと一緒にいてくれる?」
「そんなの、当たり前だよ! ボクにとってなゆはずっと、いちばんの相棒なんだから!」
「わたしにとっても、てんかは一番大切で……特別な相棒」
恋人やそれ以上の関係なんて望んでいない。キミがキミらしく在ることが、わたしにとって何よりの幸福なのだから。