きみはヒーロー

「——天華。わたしはきっと、キミを見つけよう。わたしもキミもお互いに覚えてはいないだろうけれど、どれだけ遠い未来でもキミの魂だけは決して見失わない」
「本当はね、ニンゲンであるキミをこれ以上巻き込みたくはないんだ。……だけど本音を言うとなゆが一緒にいてくれるなら心強い」

 これから先、自分たちが向かうのは遠い未来。この時代が忘れ去られるくらい離れた時代。
 なゆたはニンゲンとしての形を失い新しい姿で。天華もその魂を転生させて。次に目が覚めた時はお互いのことを覚えていないだろう。未来で使命を果たしたその時、天華の魂は消滅するという。全て覚悟の上だ。

「おやすみ、なゆ。生まれ変わっても友達になれたら嬉しいな」
「ああ、おやすみ。天華がどんなカタチでも、わたしにとってキミはキミだ」



 とても懐かしいゆめをみた。
 ずっとずっと遠い昔、てんかがまだ天華と呼ばれていた頃。この名前は仲良くなったニンゲンが「仲間を種族名で呼ぶのは寂しいから」と付けてくれたものだった。
 天華、という名前は自分でも気に入っていて、彼女がくれたものだからと自らそのように名乗り始めたような。
 あの頃の記憶を全て思い出したのは比較的最近のことである。とはいえ本のページをパラパラとめくっているような感覚で自分が体験したものだという実感はあまり持てない。

「なゆはちゃんとボクを見つけてくれたよね」
「……何の話? てんかと逸れたらてんかのことを地の果てまで探しに行く覚悟はあるけど」
「むかし、なゆに言われたんだよ。ボクのことを見つけるって。その言葉の通りに見つけてくれたんだなぁって」
「それは違う。てんかのほうが、わたしを見つけてくれた」

 村にやってきた見慣れない子供に興味を持った、トラブルメーカーの男の子。
 友達になって、一緒に村を飛び出して、調査団アマツバメを結成した。気付けば世界を揺るがすほどの大きな事件に巻き込まれて、そのまま一緒に世界を救ってしまっていた。
 そのあとの記憶は酷く朧げなものだ。まるで半身を引き裂かれるような胸の痛みを知覚したときにはもう遅い。罪を精算したてんかはすべてを思い出して自分の目の前で消えてしまった。
 ——今、てんかは目の前にいる。失いたくない、もっと一緒にいたい。キミがいたから自分は立ち上がることが出来たのだ、と。必死にもがいて僅かな可能性に手を伸ばした。

「てんかのいない世界なんて、暗く冷たい海の底みたい。……呼吸の仕方さえわからない」
「いまのなゆと、むかしのなゆ。おんなじはずなのに、たまに違うね」
「…………昔のほうが良かった?」
「ううん、どっちのなゆも好きだよ。ボクにとってキミはヒーローだから!」

 真っ直ぐに告げるてんかを見て思う。てんかこそが、なゆたにとっては眩い希望なのだと。