「ハイネ兄ちゃんと旅人さんって付き合ってるの?」
とある日の午後、シャトラの子供たちの素朴な疑問にアインは目を丸くした。
——子供たちには自分とハイネはそのような関係に映っているのか。考えたこともなかった。
他者からどのように見られているのかあまり気にするほうでもないが、恋人同士だと思われているのは少し困る。決して嫌だとかそういうわけではないけれど、少なくともアインは一度だってハイネのことを恋愛対象として意識したことがない。
恐らくそれはハイネのほうも同じで、だからこそ自分たちは必要以上に相手を意識することもなく自然体で振る舞えているのだと思う。
「自分たちはそんな関係ではないよ」
「そうなの? でも旅人さんってよくハイネ兄ちゃんと一緒にいるじゃん」
そう言われると否定できないな、とアインは苦笑する。
ハイネとよく一緒に過ごしている自覚はあるが彼との時間など大抵は新しい発明品に関する話か、以前深海を二人で旅したときに見たものの話である。彼に頼まれて発明品に使う素材を集めてくる、ということも多いが。
最初は困っているハイネを少しでも手伝いたいと思ってのことだったが彼の作る発明品はどれも興味深いもので、今となってはハイネが次にどんなものを作るのか楽しみにしている自分がいる。
「彼女は発明仲間さ」
「あ、ハイネ兄ちゃん!」
いつのまに現れたのか、背後から降ってきた聞き覚えのある青年の声に思わず振り返る。
アトリエにいると思ってた、と漏らせば気分転換に散歩をしていたら子供たちの声が聞こえてね、なんて返ってくる。
「発明仲間って言っても何かを作ったりは出来ないけど」
「それでも充分助けられているさ。私だけではフィアソラ号の改造も難しかっただろうからね」
フィアソラ号——ハイネが作り上げた潜水艦の改造を手伝ったのは事実だが、大きなことは何もしていない。
そも、潜水艦がどのように作られてどんな機能が備わっているのか、アインは何も知らないのだ。出来ることと言えば素材を集めてくるくらい。
嗚呼でもハイネは放っておくと睡眠も忘れて調べ物や発明に没頭してしまうタイプだから、適度に声をかけて無理にでも休ませることなら出来るかもしれない。
「つまりこいびとじゃないけど仲良しってこと?」
「そういうことになるね」
周囲から恋人のように見られているのだとしたら落ち着かない気持ちになるけれど、胸の奥に芽生えている恋とは違う情が心地よかった。