「君が私のことをどう思っているのかはわからないけど……私は君に恋をしているのさ」
真っ直ぐにそう告げられて心臓が大きく跳ねた。
アインがハイネを人生のパートナーに選んだのは一年ほど前のことだ。一人で暮らすには広すぎる家で、これから何十年も生きていくことになるのは想像しただけで寂しい。誰か信頼できる相手とお互いに助け合いながら生きていければ楽しいのではないか、と。
パートナーとして真っ先に頭に浮かんだのはハイネだった。彼の夢に向かってまっすぐ進み続けるその姿勢や誠実なところはずっと前から好ましく思っていたし、彼のつくる発明品にも興味がある。ハイネとの生活を想像するだけで心が満たされるような気持ちになった。
——誰でもよかったわけではないけれど、少なくとも当時はハイネに対して恋などという感情は抱いていなかったように思うし、それはハイネも同じだと思う。自分たちには自分たちの築いた関係があるのだから、一緒に生きる理由が恋でなくとも構わないと思って指輪を渡したしその指輪を受け取った。
まさかそれが今になってこんなことになるなんて。
決して嫌なわけではない。正直に言えば嬉しいと思っているし日々の生活の中できっと自分はハイネに恋をしてしまったのだと思う。
生娘のように頬を染めて、高鳴る心臓の鼓動が相手に聞こえていないことを祈りながら何とか言葉を絞り出す。
「自分もハイネのことは好きだし……きっとこの感情は恋なのだと思う。ハイネが同じように思ってくれていたのもわかって嬉しい」
一緒に暮らしてきて些細なことで相手を意識してしまうことは何度もあった。楽しそうに研究の話をしている姿を見たときとか、発明が思い通りにいかず頭を悩ませている姿を見たときとか。
ハイネのほうがアインのどんな部分に惚れたのかは知らないけれどきっと彼も意識するようになるきっかけがあったのだろう。
「ずっと一緒に暮らしてるのに今更自分の気持ちを伝えるのはちょっと恥ずかしいけど……」
「それはお互い様さ。私も本当は伝えるべきではないのかもしれないと悩んだりもしたのだけど」
「……ハイネにもそういうことあるんだ」
「当然、伝えたらその時点でアインとの関係は変化してしまうからね。その変化が良いものであるとは限らないだろう?」
……ハイネの言いたいことは分かる。もしも自分が彼にそんな気持ちを抱いていなかった場合、恋愛対象として見たことが一度もなかった場合、これから先のパートナー関係は気まずいものになるだろう。お互いに気にしないようにしていても、伝えてしまった以上元通りの関係というのは難しい。
一生心の内に秘めたまま、今まで通りの関係を続けるほうが恐らく楽ではあるし安泰だ。
最悪、関係が壊れてしまう可能性も考えた上でそれでも伝えずにはいられないほどの好意がハイネの中にはあった——という事実はアインの胸を熱くするには十分だった。
「ねぇ、ハイネ」
「ん?」
「……好きになってくれて、ありがとう」
それだけ告げてふわりと笑んだ。
——この変化が、自分たちの人生において良いものであると願っている。