——戦いの日々は終わりを迎えた。
必死に戦って、死季がなくなった。少し前までは季節の変わり目に発生する死季に怯えていたとは思えないほど、今では穏やかな日々である。
まだ死季の影響が残っている地域はあるようだし、その地域に立ち寄ったことで死季の病を発症してしまうというケースもあるようだから完全に危機が去ったとまでは言えないけれど死季の影響は時間と共に薄れていくだろうし病はクレアをはじめとした医者が必ず治療法を見つけ出してくれるだろう。
仲間たちはそれぞれ元の生活に戻っていった。戦うことから遠ざかってしまった今となっては全員で集まる機会も以前と比べて少なくなった。
とはいえ縁が切れてしまったわけでもないし時折文通をしたり家の近くまで立ち寄ることがあれば顔を出したりしている。もしかしたら世界の危機とはいえほぼ毎日顔を合わせていたあの頃のほうが普通ではなかったのかもしれない。
「誓いの指輪、かぁ……」
人生を支え合うようなパートナーになりたい相手へ贈るといい、とレーテの村の村長からレシピを渡されたのは数日前のこと。
一人暮らしは自由ではあるけれど寂しくもあると思っていたところに人生のパートナーの話を聞かされた。正直に言えばその話を聞いたときから心に決めている相手がいる。
パートナーになりたい相手へと指輪を渡すのがこの辺りの風習で、指輪さえ見せれば相手はその意図を察するだろう、と。材料を集めて指輪を完成させたのが昨日の夜中のこと。
……アリアと一緒に生きていきたい。何の迷いもなくそのように思った自分に少し驚いた。彼女に対してずっと愛情を抱いているし、元々一緒に暮らしていたこともある。
しかし指輪を渡すのはあくまでもこの地域の風習だしカインであるアリアに意味が伝わるか——ああでもロストガイアでもプロポーズなどで指輪を贈る文化があったと聞いたことがあるような、ないような。
らしくもなくアリアにどう想いを告げるべきか、どう話を切り出すか悩んでいる。
とりあえず手紙を出そうとペンを手に取り、書き出しに悩んで一時間。やっとの思いで文字を綴ってみても何かが違う気がして書き直し。彼女に手紙を届けると張り切っていた火の大妖精も流石に呆れ顔だ。
「自分だって緊張くらいする。アリアがどんな反応をしても自分の世界は大きく変わってしまうのだから」
それでもアリアの隣でずっと一緒に生きていたい、と。そんな風に焦がれてしまうのだ。
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