「ハーリーさんってさ、その…オカマ、だよね?」

私がそう問うとハーリーさんは目をギョロリとさせて私を睨みつけた。

「そうよ!なんか文句ある?」

「いや…文句はないん、です、けど…」

ひい、こ、怖い。
どうやらオカマにオカマというのは地雷だったらしい。じゃあ何なのよ、と聞いてきたハーリーさんの視線がまるで刃物で刺されているように痛い。そして怖い。本当に怖い。

こんな状態でこんなことを聞くのは少し困難かもしれないなあ。だってその質問はちょっと失礼になるかもしれないから。その、オカマ、にとって。

でも、やっぱり確かめておかなくちゃいけない。私にとってはそれくらい重要なことなのだ。これからハーリーさんにしようと思っている質問は。

すぅ、と小さく息を吸ってから私は口を開いた。

「あの…オカマってことは、さ。ハーリーさんって男の人が…その…好き、だったりするの?」

「……はぁ!?」

何言ってるんだ、コイツ。とでも言いたげな表情でハーリーさんは私を見てきた。ああ、やっぱりこんな質問をするのは止めておけばよかったかもしれない、だなんて後悔が押し寄せてきたけれどもう聞いてしまったものはしょうがない。でもハーリーさんの顔を見ることはできなくて、目を反らしながら彼からの返答を待った。

「……アンタ、アタシがそういうのに見える?」

「えっ、いや、そうは見えないけど…お、オカマ…だし…」

「まぁ、普通はそうなのかもしれないけど…アタシの場合、元々というか美を追及してこうなったというか、なんというか…」

とにかく、そういうのじゃないわよ!

そう断言した彼に私は思わず笑みを零した。そっか、そうだったんだ。よかった…。

「な、なに笑ってんのよ。いきなり人に変な質問してきて…」

「だって、つまり、私にも望みがあるってことでしょう?それが分かって、頑張ってもいいんだって嬉しくなっちゃって」

「…えっ、は、はあ!?」

あ、アンタ、馬鹿なんじゃないの!?

そう、顔を真っ赤にしながら言い放った彼はどうやら相当な照れ屋さんみたい。これは新発見だ。

今度は立場が逆転して、ハーリーさんが私から目を反らすばかり。

でも、それでいいの。きっと私の顔もハーリーさんみたいに真っ赤に染まってしまっているはずだから。


照れ屋さん

(2012/01/15)