スタスタスタパタパタパタ

早歩きで進む僕の後ろから小走りで着いてくる音が聞こえる。だが僕はスピードを緩めることなく進み続けた。

「ねえねえシューティーくん、バトルしようよー」

「だから、キミとはバトルしないってば」

本当に、しつこい人だ。
心底うんざりする。

先程のやりとりを今日何回繰り返しただろうか。おそらく5回以上はしている。

「なんで?いいじゃんバトルしようよ」

「僕は先を急いでいるんだ。今は格下のキミに構ってる暇はない」

このやりとりも何回も繰り返した。いい加減、諦めてほしい。今言った通り、僕は次の街へ行くために先を急いでいるんだ。

「格下なんかじゃない!私とポケモンたちはこの間よりもーっと強くなったんだから!」

「どうだか。キミとは過去に2回バトルしたけれどどちらも僕のストレート勝ちだったよ」

そんなキミが僕に太刀打ち出来るとは到底思えないんだけど?だから諦めなよ。

「…三度目の正直だもん」

「この世には二度あることは三度あるという諺もあるよ」

そう言い返してやれば、彼女は返す言葉もないようで悔しそうにぐぬぬ、と唸っていた。

「…だから、"今は"構っている暇はないと言っただろう。次の街に着いたら相手してあげるから」

結局、なんだかんだで僕は彼女に甘いんだ。

「えっ、本当?」

「本当。だから騒ぐのは止めなよ」

「うん。……えへへ」

「ちょっと、腕に引っ付いていいとは言ってないよ」

だからといって、それを振り払う気はないのだけれど。
格下だのしつこいだのと言っていながら僕は案外、彼女と一緒にいるこの時間が好きなのかもしれない。





(2011/08/01)