町はすっかり色めき立っている。なぜなら今日がバレンタインデーなるものだからである。
町にはチョコを渡そうと意気込む女の子やチョコを貰えないかとそわそわしている男の子、そしていちゃつくカップルで埋めつくされていた。
「なんなのよ、バレンタインデーだからってみんな浮かれちゃってさぁ…」
「まったく、惨めだねぇ!まぁキミはチョコをあげる相手すらいないだろうから」
むくれる私に嫌味ったらしくそう言ったのはシューティー。
「…シューティーだって貰う相手いないくせに」
「別に僕は興味が無いから関係ないね。そんなイベントに現を抜かすくらいならポケモンたちを鍛えるさ」
まったく、ひねくれた性格だなぁ。お互い旅をしている身であり行く先々で彼とはよく会うが本当にひねくれてる。
でも、まぁ興味がないのは事実なのだろう。でなけりゃここ、ポケモンバトルクラブになんて来てはいないだろうから。
「ねぇ、私とバトルしようよ」
「断る!キミみたいな弱い奴を相手にしている暇はないよ」
「そんなこと言っても…私たちしかいないじゃん」
「………」
そう。今、ここには私とシューティーしか来ていない。みんなバレンタインデーに大忙しなのだ。
そう思うとなんだかシューティーが不憫に思えてきた。せっかくのバレンタインに一人だなんて。
それは私にも当てはまることなんだけど。
そういえば、鞄に未開封の板チョコが入っていた気がする。
「ねぇシューティー、これあげる」
「……ふぅん、板チョコねぇ。まぁ、貰ってあげてもいいけど」
もっと素直に受け取れないのか!と言いたくなったけどまんざらでもなさそうなシューティーを見たら何も言えなかった。
……来年はちゃんと用意してあげようかな。
甘い雰囲気には程遠い
「仕方ないね。チョコのお礼としてバトルしてあげてもいいよ」
……意外と可愛いトコあるじゃない。
新たな一面に気付けたバレンタインデー。
(2011/02/14)