報われない幼馴染み

どうしてこんなことになったんだ。


はあ、と溜め息をついてみたけれどどうやら彼ら――サトシたちは気付いていないらしい。相変わらず3人とも画面に身を寄せ合っている。そんなに画面に顔を近付けてたら視力が下がるって分からないのかい?基本だろ。


どうしてこんなことになってしまったのかというと、数分前の話だ。僕はポケモンセンターに設置されているパソコンを使って、旅の記録として撮影していたデジカメの写真データを整理していた。そこでちょうどポケモンセンターに訪れた彼らと遭遇したのが運のツキ。見せて見せてとせがんできたのは竜の里出身の、たしかアイリス…だったっけ?とにかく彼女がしつこくて、仕方なく僕が折れたのだ。

「へぇ、進化の瞬間の写真もあるじゃないか!」

「わあ、すっごーい!」

旅の記録でありポケモンたちの成長の記録なんだ、進化の瞬間を撮影するのは基本じゃないかと僕は思う。たしかに進化の瞬間は素晴らしいものだけど、キミたちだってポケモンを育てているんだ、そんなに珍しいことじゃないだろう?だからさっさと帰ってくれないかな。僕だって暇じゃないんだ。これから……

「なあシューティー!この人、誰なんだ?」


サトシのその一言に、思考が一瞬止まった。


僕は基本的に旅の記録として人の写真は撮っておらず、ポケモンや景色が中心だ。例外的に人が写っているものといえば、偶然写りこんでしまった街の人だとか、ドン・ジョージやジョーイさん、それに竜の里の彼女にデントさんなどジムリーダーくらいであるが、それをわざわざサトシが訪ねる訳がないだろう。


つまりは、リーナだ。


サトシが指を差しているパソコンの画面を覗き込めば案の定、リーナと僕が一緒に写っている写真があった。その写真はちょうど、彼女が旅立った日に撮ったものだった。

「なになに!?もしかしてガールフレンドとか?」

「何を言ってるんだい?ただの幼馴染みさ」


飽きれたように言ってみせたけれど、もしリーナが本当に僕の彼女だったならどんなに良いか、そんな考えばかりが僕を支配する。


ただの幼馴染みだよなんて言い飽きてる

2011/10/19

back