報われない幼馴染み

「やっと見つけたよ」

その言葉を聞いて振り返ったリーナは僕の姿を見つけると、大きく目を見開いた。



おかしいとは思っていたんだ。僕との約束を果たすために各地のジムを回っているはずなのに、ジムリーダーたちにキミの事を聞いてみても誰もそんな挑戦者は来なかったと言われたから。

まさか、まだこんなところにいたなんて。


「こんなところで何してるのさ、ジムにも全然挑戦してなかったみたいだけど」

「…………」

「何か言ったらどう?」

「……ごめん、私のこと嫌いになったよね」

「どうしてそんな風に思うんだい?」

どうしてリーナがそんなことを言うのか分からなかった。僕がリーナのことを嫌いになるなんてありえない。むしろ、久しぶりの再会にリーナへ想いが、好きだという気持ちがより込み上げてきているくらいなのに。

「だって私、待ってるって言ったのにこんなところで立ち止まってるんだもん」

「別に、嫌うことなんかじゃないさ」

「…ありがとう」

そう言って穏やかに笑った彼女の纏うその雰囲気は、旅立つ前に比べてぐんと大人っぽくなっていて。立ち止まっていたと言ってはいたけれど、そうとは思えない程に僕とリーナの間に差を感じた。

「立ち止まってしまったことに何か明確な理由はあるのかい?もし解決できることなら…」

僕が力になりたい。そしてキミがまた一歩踏み出せるようになったなら、僕と一緒に旅をしようじゃないか。そう告げようとした、のに。

「私ね、カントー地方に行こうかなって。でも…迷って、いたの」


カントー地方?そこって、サトシの故郷のある田舎じゃないか。なんで、わざわざそんなところへ?僕との、約束は…?


僕の中にある何かが、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた気がした。


いまさら嫌いになれるわけがない

2011/11/26

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