報われない幼馴染み

「私ね、旅立ってから割とすぐ、自分にポケモンバトルの才能がないことに気付いたの」

ぽつり、とリーナは話し始めた。僕は頭が真っ白になりかけていたけれど、彼女の言葉を聞き漏らしてしまわないようになんとか意識を集中させた。


「全然勝てなくて、傷つくポケモンを見ていられなくて。もう、バトルをしたくないって思ったの」

だからバトルをやめてしまった。旅の目的を失って私はどうしていいかわからなかったんだ。いっそ、カノコタウンに帰ろうとも思ったけど、旅はかろうじて続けたの。ポケモンと色んな町を歩くのは楽しかったから。

そして、その旅の中で知ったんだ。ポケモンバトルだけがポケモンとトレーナーの在り方じゃないんだってこと。ブリーダーやソムリエ、コーディネーターにドクター…ポケモンとの関わり方はたくさんあるって知ったの。

「それでね、私はポケモンブリーダーになりたいって思ったんだ」

嬉しそうにリーナは語った。なんだ、リーナは全然立ち止まってなんかいないじゃないか。なのに、どうして。

「でも、ね」

「でも、何?」

「そうしたらシューティーとの約束を破ることになっちゃうでしょう?」


ああ、そうか。そうだったのか。

僕が、僕との約束がリーナを立ち止まらせていたのか。


約束なんて忘れてくれた方がいいんだよ

2011/12/01

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