森の奥深く、夜も深まっているというのに、その場には大勢の人間が集まっている。

人だかりの中央、一人の男が地面に大きな陣を描いていた。

そして陣の中心には、まだ幼くあどけない、一人の少女。


「と…とうさま、なに、するの…?」

瑠花ルカ…すまない」


おびえる少女の問いかけに、苦しそうに目をそらす男。
そうして最後の円を描き、陣は完成する。

そこに居た者全員が陣を取り囲んだ。


「や、やだよ…とうさま…かあさま…!」


ただならぬ雰囲気に、少女は両親を呼ぶ。


「ごめんなさい…ごめんなさいね瑠花…全てあなたを”不減”に生んでしまった、私のせい…」

「瑠花…”不減”の子は争いをもたらす…
”不減”は一族全員の命を懸けて封印する、一族創始からの掟なのだ…すまない…」

涙を浮かべる両親に、隣にいた男が声をかける。


「当主様…そろそろお時間です…辛いでしょうが…」

「あぁ、分かっている。
…皆、全力でやってくれ。失敗などしようものなら、ここにいる全員の命はない」


全員が顔を見合わせ、こくりと合図する。

そして一斉に同じ印を組み始め、陣の淵に手を着く。
陣は光を放ち、その中心にいる少女へ向かった。


少女はぎゅっと目を閉じる。


里の全てを照らすかのような光が、少女を包む。

その瞬間、陣を伝っていた光は消え、周りにいた全員へと跳ね返る。


「ぐぁ…っ!」

「っ…!」

「はぁ…!!」


周りにいた者が、バタリバタリと倒れていく。
少女は意識を失う瞬間、父親の最後の声を聞いた。

「ま、さか…”不減”に加え……”無効化”…だと……?」


他国でも有名な、医療忍術に長けた古い一族、相葉一族が一人の少女を残し、全滅した一夜だった。