私が10歳の時だった。
 初めての引越しを経験し、初めてのポケモンをゲットし、そして初めての旅立ちに毎日心が踊っていた。
 私は世間知らずだったが運と要領は良い方で、すぐにトレーナー戦での効率の良い小金稼ぎを習得し、順調に旅を進めていた。もっぱらジム戦に備えるためのきずぐすり他諸々資金集め、それに日々勤しんでいた。
 その日もおぼっちゃま・おじょうさまを中心に、おまけでエリートトレーナーでも狩ろうと獲物を探していたのだが、生憎そんなに対戦してくれるトレーナーは居なかった。むしろトレーナーが少なかった。
 そんな中、やけに上品な服をめかしこみ、そんな装いとは裏腹に陰気な顔をして歩いている少年が居たのだ。
 なんだ? おぼっちゃまの亜種か? レアおぼっちゃまか? と遠慮もなくガン見していると、あちらも私に気付いた。なかなかきれいな目をしていた、と思う。

「あっ! 今目合った! 合いましたね! 目と目が合ったらポケモンバトル! いざ!」
「!!?」

 彼も災難だったと思う。デボンの取引先との会食へ向かうその前に気分転換としてひとりふらふらしていたらしいのだが、いきなりバトルをふっかけられ手持ちも揃っていないのにきっちり相性の良いポケモンを出す私、為すすべない彼、巻き上げられる金。

「よし、勝った! ほい賞金を!」
「…ごめん、今僕あまりお金を持ってなくって…」
「(この額で…?)大丈夫、ありがとう」
「こちらこそ、気分が晴れたよ」
「…負けたのに?」

 そういうこともあるんだよ、笑った顔は大人びていててっきり年上かと思ったら彼は私と同い年だった。

「そう、なのか……ねえ、ポケナビ交換しようよ。また会おう」

 そしてバトルして賞金を下さい。これノーマルおぼっちゃま何人分だ…? 遥かに効率が良い。そんな下卑たことを思いつき自分からそう持ちかけたのが良くなかったのだと思う。
 彼は目を数回瞬かせた後、了承した。

「いいよ。…はい」

 まだ登録数が少ないポケナビの、リストにその名前が並ぶ。

-----ツワブキ ダイゴ

「よろしく、名前」

 ジムバッジを獲得していくそのうちに、ツワブキという名は至る所で聞くようになり、私は今日のことを思い出しては恥ずかしくなり溜息を大げさにつく羽目になった。


170824
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