黄色の型式番号
痛覚と共に意識が浮上する。覚醒と同時に迸る全身の激しい痛みに呻きながら薄く目を開いた。
もはや何処を怪我しているのかもわからないほどに広がっている痛み。とにかく辛いが、どうやら生きてはいるらしい。どうして助かったのかなんてわからないが、命があるだけ儲けものだ。
「目を覚ましたのね、良かったわ。具合はどうかしら」
霞んだ視界に誰かが映った。寝覚めのしょぼしょぼする瞳では誰かなんてわからないが、知っている人ではない気がした。この人が助けてくれたのだろうか。
「…全身、痛いです。すごく」
「それはわたしでもどうにもできないわ、堪忍してね。出来うる限りの手当はしておいたのよ」
声からして女の子だ。それも、幼い。でも話し方がゆっくりで、そうだ、祖母のようなゆったりと間延びした口調をしていて、それだけで安心感が生まれる。
手当をしたと言うのだから、彼女が助けてくれたので間違いはないだろう。お礼を言わねばと、目を瞬かせて視界を正常に戻す。
ぶれた像が定まってわかったが、相当幼いぞこの子。子ども、10歳いっているかいないか。ライト・クリームの髪をツーサイドアップにし、服はリボンとフリルがふんだんにあしらわれた白いワンピース。そして、左目の下にはビビットイエローの00の数字。
「あ、アンドロイド…!?」
「あらぁ、やっぱり驚くわよね。ごめんなさいね、隠そうと思っても不自然になってそのままにしているのよ」
「隠す…?よくわからないけど、えっと、助けてくれたのって、キミだよね?ありがとう」
「わたしというか、わたしでないというか…。彼を呼んだ方が早いわねぇ。少し待っていてね」
少し混乱しかけたが、アンドロイドに悪い意味で慣れてしまった。とりあえず命の恩人には変わりないのだしお礼を言えば、どうにも微妙な反応。思案するように呟きながら、女の子は部屋から出ていく。
暇なその間に部屋の内装を観察するが、壁に所々ヒビが入っていたり、少し埃っぽかったり、台や椅子の金属部分なんかは錆びていたりと、少々退廃的なものだった。
「お待たせ」
「ミーア!」
「ゼロ!?」
帰ってきた女の子を押し退けるようにして現われたのはゼロだった。どういう関係だとかどうして外に出ているだとか疑問は次々に浮かぶが、ゼロが土下座にも及ぶ勢いで正座するものだから言葉が出なかった。
「申し訳ありません。そのように傷を負わせるなど、いくら共に居なかったとはいえボクの失態です」
「え、え、えっと。顔を上げてよ。一体なにがあったの?」
「それはわたしから説明させてね。でも先に名前を名乗らせてもらうわ。わたしはエリザベート・バートリーよ」
「ええと、ミーアです」
「それでね、ミーア。あなたは丸1日眠っていたのよ。止血に輸血をしたとはいえ血を流しすぎていたから危なかったわ。今から語るのは昨日の夜のことよ」
そう前置きをして、エリザベートと名乗った少女は語り出した。
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紅桔梗の男が気を失ったミーアに刃を振り下ろした時、一際大きな金属音が響き渡った。
誰かが防いだ。しかし、その誰かを確認する暇もなく、顔ほどの大きさもあろうライフル砲の砲口が目の前に広がる。
「ゼノ!来い!」
固まりかけた体を引っ張ったのは金糸の青年の声。砲口から熱気を感じたとともに、その場から"消える"。
放たれる、形のない青白い炎のような弾丸は生体に直撃することもなく塀を粉々に崩した。
高かった塀は突如空いた空洞により不安定になり、ばらばらと砕けながら崩れ落ちる。
降りかかる瓦礫をものともせず、砲弾を放った張本人、ゼロは気を絶ったミーアを庇うように立ち上がった。
「おいおい、なんだよアレ」
「アンドロイド…?いや、刺青はビビッドイエロー、おれ達とおんなじだ!」
後方に退いていた金糸の青年。彼の前に降り立った紅桔梗の男が冷や汗を僅かに流しながら笑う。見れば、彼の鮮やかな長い前髪の先端が少し焦げていた。
紅桔梗の問いに、金糸の青年は少々驚愕した様子だった。彼等三人に共通するのは左目の下の黄色い刺青。ゼロには01、紅桔梗には53、そして、金糸の青年には39。それぞれが型式番号を持っていた。
「へぇ、こんな所で同胞に会うとはね。オマエも同じなら、おれ達の行動理由ぐらいわかると思うんだけど。あぁでも、見たところオマエは二個目のヤツだね。それなら微妙か」
「呑気に話してんじゃねーよ、さっさと…ぶ、ぶんせき?しろよ」
「はいはい。その間の相手は任せたよっと!!」
彼等が話終える前に、ゼロが動いた。目にも止まらぬ速さと共に、大砲を形どっていた砂鉄が剣へと変形する。それを金糸の青年は避け、塀の上へと飛ぶ。それを追おうとしたが、紅桔梗の男に阻まれた。
「おめー、なんだその黒いうじゃうじゃ。魔素かぁ?」
先程とは違い会話も交えて余裕を見せる紅桔梗の男に、ゼロは応えることなく連撃を繰り出す。
しかし、それは悉くが防がれ、しかも力ならばゼロが劣っていた。それは不利だと判断したゼロが飛び退いて距離を取れば、紅桔梗の男が一瞬で目の前に現れる。
「…移動。瞬間移動、分析します」
「こいつ、ブレインか…!?」
金糸の青年が再び驚くと同時に、ゼロの瞳の内にある照準が紅桔梗の男を捉えた。剣がすぐさま変形し、再びライフル砲となって紅桔梗の男を狙う。今度は連射7発、一切の加減もせずに撃ち込む。
1発は地面を抉り、2発は刀に弾かれ、3発は刀を粉砕した。そして最後の1発を放とうと砲口に熱が集中する。しかしーーーー
「…っ、ぐ」
初めてゼロが呻いた。見れば、彼の体には数本の刃が刺さっているではないか。紅桔梗の男ではない、では何処から?
答えは空中から。水面の波紋のように空中が揺れ動き、その中心部から剣が生えていた。
「…魔素、分析開始」
「チッ、致命傷にならなかったか…」
「おいジブリール、しっかりしろよ。てか、ぶんせき?できたのかよ」
「うるさいなゼノ!敵の前で名前を呼ぶなといつも言ってるだろ!?」
ジブリールと呼ばれた金糸の青年は急所に一発も当てられなかったことを歯噛みした。
ゼノと呼ばれた紅桔梗の青年は文句を飛ばすが、逆に怒鳴られて面倒臭そうに肩を竦めた。
「こっえぇの。うおっ、あぶね」
剣に変形させたゼロが切りかかる。それを残った柄で防ごうとしたが、それごと砕かれて手の平が斜めに切れた。
「ゼノ、油断するなよ!ああもう、仕方ないな、あんまり晒したくはないんだけど」
ゼノの頭上に波紋が広がる。そこから新たな刀が降ってきて、見えていないはずだというのにゼノはぱしりと刀を掴んだ。
鞘を乱暴に捨てて、仕切り直しだとでもいうようにぶん、と空を斬る。がーーーーーー
「…ストップだゼノ、こいつ、駄目だ」
「あ?」
突然、今にも斬り掛かろうとしたゼノをジブリールが止めた。
勢いが削がれてあからさまに不機嫌を表すゼノにジブリールは続ける。
「こいつ、ブレインもバーサーカーも、なんならソルジャーにエージェントだって持ち合わせてる」
「ぶれ…?」
「この前教えただろ。おれ達は一つなのにあいつは四つ持ってるってことだよ。いくら二対一で、向こうが負傷者抱えているとはいえ、長期戦に持ち込まれるだろうし他の騎士が来たら厄介だ」
「……魔素は視覚と死角」
「もうバレたか。ブレイン単体としてはおれの方が上だけど、これは…っておいゼノ!」
「関係ねーよ。斬りゃ同じだ」
ゼノはジブリールの言葉を無視して斬り掛かる。やりやがった、と額を押さえたジブリール、防御態勢に入るゼロ。
刃がぶつかり、再び斬り合いに突入するかと思われたが、それは制止された。
「やめないかゼノ!ジブリールの言う事を聴きなさい!!」
「げ、」
「な、ななななんでここに…!?危ないって!」
ジブリールの後方から怒りの表情で歩いてきたのはこの場に似つかわしくない少女。
ジブリールに耳を貸さなかったゼノは、ぎょっとした表情で動きを止め、ゼロも三人の様子を見て余計な攻撃で刺激をするのは逆効果だと判断し、一度刃を下ろす。無論警戒はやめないが。
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「それで、彼…ゼロくんと言ったかしら、ゼロくんにも話を付けて双方刃を納めさせたのよ」
「…彼女がミーアの治療を申し出ました。状況説明と出血状況から医院に行くよりも彼女に任せた方が生存率が上がると判断しましたので従いました。……しかし、生存確率は決して高くなかったので…良かったです」
「女の子だから傷は残らないようにしたかったのだけどそうも言ってられなくてねぇ。血は足りているかしら?貧血気味であれば遠慮なく言ってねぇ」
「大丈夫…だと思います。ありがとう」
「よォーばあちゃん、水持ってきたぜェ」
「おい、入るならノックしろって言ってただろ。…あ」
エリザベートと会話している最中、突如開いた部屋のドア。ぼんやりと聞き覚えのある声が聞こえたかと思えば、忘れもしない紅桔梗の男が立っていた。その紅桔梗の男に続くように、金糸の青年が姿を見せる。
バッチリと、金糸の青年と目が合った。お互いが「あっ」という顔をする。
「こらあんた達!わたしが呼ぶまで入ってはいけないと言ったでしょう!」
「ごめん…おばあちゃん。」
「まったく、ミーアさんが固まっているでしょう。…でも丁度いいわ、ほら。こちらに来て謝りましょう」
「なァーんで俺が謝んなきゃなんねーんだよ」
「ぶつくさ言わない、おばあちゃんの言う事聞けよ」
頗る嫌そうな紅桔梗の男を半ば無理矢理引き摺って、エリザベートと金糸の青年と紅桔梗の男が並ぶ。そして、エリザベートと金糸の青年が頭を下げた。紅桔梗の男はつまらなさそうに明後日の方向を見ている。
「ごめんなさい。わたし達の相手は本来、王城騎士のみだったのです」
「王城騎士って…」
路地での出来事がフラッシュバックする。血だまり、死骸、悲鳴、音、全てが鮮明に想起されて、吐き気に口元を押さえた。
ゼロが背を摩ってくれたが、気分の悪さは治まらない。
「一般人にはやはり刺激が強いわね。だからなるべく見せないように人気のない場所を選んだのだけど」
「仕方ないよ。大国なんだし人ぐらい何処にでもいるって」
「てかばあちゃん、腹減ったんだけど」
「ゼノラックス、貴方は少し黙っていなさいな」
ゼノことゼノラックスを一喝し、エリザベートは真剣な目付きになる。それは子どもがするのうな表情ではなく、どうしてかミーアよりもずっと年上に見えた。
「とにかく、ミーアさんには謝罪します。殺し殺されなんて普通の女の子が見ていいものじゃあないわ。わたし達は人殺し、とはいえ事情があってのものです。快楽目的でもなんでもありません、なのであなたを殺したりはしないわ」
「……」
「その言葉に嘘はないと思います。ミーアのことは殺そうと思えばいつでも行動を取れていました。ボクが阻止しますが」
少し困ってゼロを見れば、彼は淡々と頷いて信頼に値する理由を述べた。
正直信頼なんてできないが、ゼロがそう言うのならば大丈夫なのだろう。彼は論理的だから。
そこまで納得はいっていない様子だったが曖昧に頷いたミーアと、傍に控えていつでも戦闘態勢を取れるよう密かに構えているゼロを見比べて、エリザベートは疑問を口にする。
「ところで…あなた達はどういう関係なの?ミーアさんは、彼の意味をわかっている?」
「ゼロの意味…?」
「そう、ゼロさんというよりは黄色い型式番号の意味よ」
「え、おばあちゃん、それ話していいことなの?」
「わたしが単純に気になっただけよ。ミーアさん、失礼だけれどあなたの身分証明証を勝手に拝見させてもらったわ」
「…あ!私のカード!!」
エリザベートが懐から取り出したのは、王城勤務証であるカード。そこにはミーアの顔も名前も役職もなんなら補佐を担当する研究者の名前、ハイドランジア・グリーゼという文字まで乗っている。まさに身分をいち早く提示できるものだ。
慌てて取り返そうとすれば、案外すんなりと返してくれた。無理に動いたので傷が痛んだが、カードになにかされていないか確認する。
「拝見しただけよ。そのカードのお陰であなたがどういう役職なのかすぐにわかったわ。…ゼロさん、危害を加えるつもりはないから武器を生成しないでいただけるかしら。ジブリール、ゼノラックス、あなた達も構えるのはやめなさい」
「……」
後ろ手で組み上げていた砂鉄の動きが止まる。同時に、武器を取り出しかけていたジブリールとゼノラックスも制止されて、ゼノラックスが不服そうに舌打ちをした。
「ゼロさん、あなたは自分がどういう存在か理解しているかしら」
「あー。おばあちゃん、ソイツ駄目だよ。メモリーデータが破損してる。96%壊れてるからなーんにも覚えてないと思うよ」
エリザベートの問いに答えたのはジブリール。何故メモリーデータが破損してると知っているのか。それも、正確な破損状況まで。睨むゼロに、ジブリールはやれやれと肩を竦めた。
「ミーアさんとゼロさんさ、黄色い刺青は元人間っていうのは知ってる?」
「黄色い刺青が元人間…?ゼロが…その、元人間かもっていうのは…」
「知りません。どういうことですか」
「アンドロイドの型式番号に色がついてるのはわかるよね。そうだな、青色だったり赤色だったり。あれって一見ランダムだけどそうじゃない。それぞれに意味があって、ソイツがどういう意図で作られているのかわかるヤツにはわかる」
説明役に出たジブリールが左目の下を指差した。
確かに、街で見かけるアンドロイドの左目の下に彫られている型式番号はカラフルなものだった。そういうものかと思って気にしたことなどなかったが、そういえばここの四人は全て黄色い刺青だ。
「街とかでよく見るのは本物の、純粋な機械のアンドロイドだよ。でもさ、黄色ってポピュラーなのに見ないでしょ?」
「確かに…言われてみれば見ないけど…」
「それさ、黄色は表に出ちゃいけない色だから。人間を改造したやつなんてそりゃ出しちゃいけないよね」
「少し待ってください。その、貴方の話を鵜呑みにすればボクは元人間ということになります。どういう意味ですか。説明を求めます」
「意味もなにも、その通りだよ。でも、状態的に言えばゼロさんは自然だ。なんせ、元人間なんていう記憶はデリートされるからね。混乱するのも無理はないよ。おれらが覚えてるのがそもそもおかしいんだから」
「ボクはアンドロイドです。己の機能も性能も把握しています。純然たるアンドロイドです」
「そうさ、アンドロイドさ。でもおれらは元々人間なんだよ」
「ね、ねぇ」
僅かに取り乱した様子のゼロが畳み掛ける。そこに、ミーアが口を挟んだ。
「なんで、人間をアンドロイドに…?」
「なんで?なんでだと思う?」
「……」
「そりゃ、良くないことに使うためだよ。具体的に言えば戦争、策謀、政略…諸々の汚れ仕事に使うためさ。ならどうしてわざわざ人間を改造するのか?そんなの、魔素があるからだ」
「魔素があるから…?」
魔素、先述した通り、生命を持つ者しか得ることのできない能力。ミーアは持っていないが、ハイドランジアも、ジブリールもゼノラックスも持っているその天賦の能力。
「魔素ってピンキリだけど強いものは強いよね。それをさ、自分の支配下に置けたらどうなると思う?」
「万能の力を得る。それを自由自在に使えるのならば、世を統べることも手の届かない夢ではなくなるわ。他国を牽制することも、政治的権力的に有利に立つことも、なんなら争い事だってね」
ジブリールの言葉に続いたのはエリザベート。
彼女の話は一見規模が大きすぎるように聞こえるが、事実だった。
魔素は上限も下限もない。果てしなく強い力を持つこともあれば、どう足掻いても弱いものだってある。もしも、強い弱い関係なく魔素を自由にできるのならば、指揮官が有能であれば万物を操ることができる。一国を滅ぼすことだって、やろうと思えばできてしまうのだ。
実際、他国間ではそのような戦いが頻発しているところもある。エルドジアムはアンドロイドと物流によって安寧を築いているものの、安全とは言えない。先日のように大きな事故が起こることだってあるのだから。
「ゼロさん、キミは人間だよ。まぁ信じらんないかもしれないけどさ。キミも、おれらも人間だ」
「ボクが…人間…」
「分析する限り相当改造されてるけどね。多分実戦投入前って感じの出来だ。四つも複合されてるし、期待されてたんだろうさ」
「その、四つというのはなんです?確か、戦闘時にも言っていましたが、ブレインやバーサーカーとは?」
「あちゃ、それもわからないか」
「俺もわかんねーぜ」
「ゼノにはさんざ説明したよなぁ?」
いつの間に出していたのか、チータラを咥えながらゼノラックスが呟く。対するジブリールは握り拳を震わせながら頬を引き攣らせていた。
その様子はいつも通りの光景なのだろう、ちらりと視線をやっただけで溜め息をついたエリザベートがジブリールの跡を継ぐ。
「私達、改造アンドロイドには本来なら違法な筈の戦闘能力が搭載されているのよ。分類は大きく分けて四つ」
曰く、指揮官として優れた知能と分析能力を搭載された"ブレイン"。
使い捨ての殺戮マシーンであり、身体能力を底上げされた"バーサーカー"
一般的に、ブレインの元で戦闘を行う"ソルジャー"。
そして、スパイや隠密行動を得意とする"エージェント"。
魔素持ちの改造アンドロイドは大体がこれに振り分けられる。どれも、穏やかではない活用方法であり、全てが製造法に反している。
ジブリールはブレイン、ゼノラックスはバーサーカー、ゼロは四つ全てを複合している。
「エリザベートは…?」
「わたしは…。わたしは、約立たずでね。魔素が治療にしか役立てることができないから、アンドロイドとして改造はされたけど中途半端で、どれも搭載されていないの」
「こんなの搭載されないほうがいいって、おばあちゃん」
「先程から疑問に思っていたのですが、そのおばあちゃんという呼び名は?彼女は幼子です、些か似つかわしくありません」
ミーアが地味に気になっていたことをゼロが突いた。
問われた三人はそれぞれ顔を見合わせている。そういえばそう見えるよな、とでも言いたげな微妙な表情をしていた。一拍の間を置いて、エリザベートが吹き出す。
「あはは、わたしは子どもじゃないのよぅ。今はこんなナリをしているけれど、還暦をとっくに迎えたおばあちゃんなのよ?詳しいことは乙女の秘密だから教えられないけどねぇ」
「え、え」
「わたしのことはそういうものだって思ってちょうだな」
「はぁ」
「それでおばあちゃん、この人らどうすんの?」
少し和んだ空気が、ジブリールの一言によって僅かに張り詰める。
そうだ、ここら彼女らの本拠地であり、随分と踏み込んだ話も、彼女らの名前も聞いてしまった。今でこそこうして話しているが、どんな理由があるにせよ彼女らは殺人鬼も同等なのだ。
そんな相手と関わって、傷まで治してもらった。はいそうですかと素直に解放される筈がないのは当然で。
「そうねぇ、帰してあげたいのだけれど…」
「お、殺すか?」
「排除しますよ」
頬に手を当てて眉を下げるエリザベート、嬉々とした表情で問うゼノラックスに牽制するゼロ。各々の動向を見るジブリールに、冷や汗を流すミーア。
短時間だが、わかったことがある。ここで決定権を持っているのはエリザベートだ。彼女の言うことにはジブリールもゼノラックスも従っていた。
エリザベートは穏やかそうに見えるが、殺人に加担していることを忘れてはいけない。しかし、交渉次第ではマシな処遇になるかーーー?
あらゆる切り返しと条件を脳内で整理し、ミーアはエリザベートの言葉を待った。