クラピカ辿希様

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 暗い闇の中。どこまで闇が続くかも分からない空間で周りを見回してみたが、視界に広がるのは黒ばかり。どちらが前で、どちらが後ろなのかも分からず、それなのに不思議と自分の姿のみがはっきりと見える。
 一歩、また一歩と足を踏み出してみても、足音すら響かず、足跡すらつかない。
闇は怖くない。だから体が震えて進めないということもない。
 それなのに、どうしてかオレは両膝の間に足を埋めてしゃがみ込む。そんなオレを責め立てるかのように、幾つもの緋い瞳が暗闇の中に浮かんではこちらを見つめてきた。
 止まるな、と。お前にその資格は無いのだと、そう言われているようで、オレは力の入らない足を奮い立たせようとする。当然ではないか。オレは、彼らの無念を晴らさなくてはならないのだから。ひとりだけのうのうと生き残っているのだから、その義務があるんだ。そのために闇の中を歩いてきたんだ。

「クラピカ」

 微かに聞こえた声に、オレは顔を上げる。忘れてしまいそうになるたびに、こうやって聴かせてくれるその声の主の姿は見当たらない。代わりに、一対の緋い眼が涙を流していた。

「もう、いいんだよ、クラピカ」
「ナマエ……」

 あぁ、愛しい人よ。オレが必ず見つけるから、そんな事言わないでくれ。

「もう、自分の道を生きてもいいんだよ」

 やめてくれ。そんな言葉をかけないでくれ。オレは許されていい存在ではないのだ。だって生きているオレは、お前の苦しみを本当の意味で分かってやれないのだから。
 だから、そんな慈しむような瞳を向けないでくれ。他の眼のように生きているオレを羨み、恨み、責め立ててくれ。何故、お前だけが生きているのだと、怨めしいと、生きたかったと、せめて一族の恨みを晴らせと、そう言ってくれ。そうでなければ、オレはここで折れてしまうんだ。

「大好きなクラピカ…。もう、忘れていいんだよ」

 その言葉を聞いたら、オレはもう動き出す気力が無かった。
 また顔を下げて目を強く閉じる。もうキミの声が聞こえないよう、耳も塞いだ。

 次に目を開けた時は、きっとベッドの上だろう。オレはこれが夢だと知っているのだから。だから、本当は許されていない。そのことを強く胸に刻んでおこう。そうしなければ、その甘ったるい言葉に甘えてしまう。オレはまだ、ダメなんだ。

「……私は大嫌いだったよ、ナマエ…」

 だからキミの言う事は、聞いてやらない。
 いつか夢の中で、ひとり生きのびたオレを大嫌いだと笑ってくれ。オレがずっと、闇の中を歩けるように。

大嫌いだと笑ってよ