文太(23)との朝チュン



閉じた瞼が眩しさを感じ取る。

ふと目を覚ませば、視界に映るのは見慣れた天井。天井のシミの数が把握できるぐらいにはここに住んでいる、俺の家だ。
南東向きの窓からは朝の日差しがやけに身体を照らして正直暑い。…くそ、カーテン閉め忘れたか。
額に滲む汗を拭おうとすれば、俺の腕には何か重いものが乗っかっていて動かなかった。
首を動かして確認すれば、無防備な顔をしながら小さい寝息をたてて眠りこける女が俺の腕に頭を乗せている。伏せられた白い瞼に長いまつ毛がよく映えていた。
ああ、そうか…昨日コイツを家に泊めたんだっけか…。

まだ一緒にいたいと抜かすコイツに忠告するだけのはずが、俺もまだまだ自制心が効かねえガキだったみてえでそれはまあ美味しく頂いた。
柄にもなくコイツを何度も抱いちまった自分に、俺はコイツのことが本気で好きなんだって嫌でも分かってしまう。数え切れねえぐらいしたせいで、そのままお互い眠りこけたらしい。
俺もまだまだ猿だな、なんてふっと笑みをこぼしながら時計を確認する。

短い針はもうすぐ9時に差し掛かろうとしていた。

………まずいな…。コイツ、そういえば仕事があるって言ってなかったか?

「オイ、遅刻すんじゃねえか」
「……ん、っ」

俺が身体を揺すれば、掠れたような甘い声を出しながら官能的に身体をくねらせる。
その拍子に、コイツの身体に掛かっていた布団が身体をくねらせるたびにずれていった。
あのまま寝落ちしたせいで、何も身に纏っていない身体は朝の日差しでやけに白く見える。
華奢で、思わず汚してやりたくなるような背中の筋が俺の腰を重く、疼かせた。
…朝っぱらから、コイツは……。

何度揺すっても起きねえせいで、俺の悪戯心がだんだんと湧き上がってくる。

「…いい加減にしろってんだ」

手始めに背中を指先で触るか触らないかのぎりぎりでツーッと撫でるようになぞる。そんな俺の指にピクンっと身体を少しだけ震わせて掠れた甘い吐息を漏らした。
脊椎から肩甲骨をなぞりながら脇腹へと流れていってる途中、下腹部に入りかけた途端身体が大きく跳ねる。

「っあ、…だ、だめ…っ」

飛び上がるようにして起き上がったせいで、身体に掛けていた布団が一気にずり落ちる。
起き上がる一瞬、身体の痛みで顔を顰めながらも視界に入る光景に理解が追いつかないのかすぐにキョロキョロとし始めた。
昨日の名残がしっかりと残った身体が丸見えのことなんざ本人は露知らず、目を白黒させながら何度も瞬きする瞳で俺をぼんやりと見つめる。

「文太さん…?」

甘い声色、まるで情事を想起させるかのようなそんな声色に眉間に皺がよった。
無駄に色気振り撒きやがって……。

「時間、みてみろ」
「?時間って…」

パチパチと丸い目をキョロキョロさせながら部屋の中の時計を探す。俺の部屋だからか、時計を見つけられねえコイツのために俺が時計を指差してやると数秒間だけ時計を見つめて膝立ちになりながらワタワタと自分の荷物を探し始めた。
俺は枕元にあったタバコを手に取って、口に咥えながらその様子を見つめる。
…イイ身体だな、やっぱ。特に掴みやすい尻が…と昨日の記憶を思い出しながらまじまじと見た。

俺が何も言わず、ずっと見つめているのに気づいてソイツは泣きそうな表情でベソベソし始める。
…ちょっと可愛いって思っちまったのは重症だと思う。

「なんですか文太さん…私、急いでるんです…ちょっとは手伝ってくれたってっ」
「ああ…朝からサービス精神旺盛でいい眺めだなって思ってな」
「え」

俺の視線が顔じゃなく、身体に向いていることにすぐ気づいて慌てて自分の服をかき集めて大きな声で「文太さんのすけべ!オタンコナス!」と喚きながら風呂場の脱衣所へと篭った。
その語彙力のなさに笑いがこぼれつつも、口に咥えたタバコに火をつける。
あんな扇情的なナリして、本人は妙に子供っぽい。そんなアンバランスな魅力にやられちまったわけで。

まあ、見物料ぐらいは協力してやるか…とタバコを吸いながら俺も車のキーを手に持って着替えることにした。



タバコを消す頃にはアイツも準備ができたみたいで、昨日と同じ服を着ながら懲りずに「朝帰りなのバレバレだあ…」としくしくとべそをかいている。お前が来てえって言ったんだろって、口から出かけたがまあ抱き潰しちまった俺の責任もあるからと大人しく黙っておく。

「じゃあ、行ってきますね…あのお邪魔しました…」

やっと昨日の行為の恥ずかしさの反動がきたのか、頬を桃色に染めて小さく俺にそういうコイツにいじらしい気持ちを覚える。いじめてやりてーけど、同時に甘やかしてやりてーとも思う。
玄関を開けようとするアイツより先に俺がつっかけを履いて玄関を開けてやった。その俺の行動に首を傾げる。

「文太さん、お仕事お休みですよね…?」
「送ってやるよ」
「え、そっそんなわけにはいかないです…!せっかくの文太さんのお休みなのに…っ」

時間もねえってのに心配すんのは俺のこと。
いいから素直に甘えときゃいいのによ…そんなことを思いながら強情なコイツにどう言い負かしてやろうかと内心面白おかしく思っていた。
めんどくせーな…とプンスカと断るコイツの腰を俺の身体へとグッと引き寄せる。途端に顔を真っ赤にした目の前の愛おしいオンナに思わず口角が上がっちまう。

「腰、いてーんだろ?」
「っ」

俺の言葉に、俯きながら目を潤ませたコイツにあーやっぱもっかい抱いてから行ってもいいんじゃねえかって頭の隅で思う。
そのコイツの表情はすっげえそそられる、女になった顔をしていた。



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