チームB1周年記念特設ページ

ブルーラバーズ

 バニラやチョコレートのような甘くて味の濃いアイスクリームよりも、やはりソーダの味がする青色のアイスの方が夏はいい。前者は口の中に嫌な甘さが残るけれど、後者はそんなことはなくむしろさっぱりとするから。固さがあるのも良いと思う。大きな一口で塊を齧り、氷の粒を噛み砕く感触が、理由はないけれど好きだった。たまに大きな欠片が紛れていると、少し嬉しくなるのだ。
 難点といえば、すぐに食べ終えてしまうところだろうか。片手で持てる手軽さの代わりに、腹を満たさないとまでは言わずとも持続性がない。
 もう1本を追加で買いに行く気はないが、なんとなく物足りないなと思った。
 ミズキはちらり、と隣で同じくアイスを食らっているヒースを見やる。とっくに食べ終えていた自分とは対照的に、ヒースは鼠の一口を思わせるほどちびちびと食べ進めていた。まだ、半分も減っていない。
 ミズキは、その様子に最適な言葉を脳裏に浮かべ、ぽつりと呟いた。

「チカクカビン」
「違う」

 事前に定められたレッスンの時間が終わったのはいいが、夕方頃から始まるホール作業まで随分と時間があった。当初の予定ではそのまま店に居座るつもりだったのだが、無性にアイスが食べたくなったのだ。それならば己の欲望に従うまでと店を出ようとしところ、効きすぎた冷房に気分を悪くしたヒースが気分転換についてくると言ったので、2人でコンビニに出向いた次第である。
 ヒースは暑さにも寒さにも弱く、更に加えて冷房機器にも弱かった。夏場、1番冷房の効きが良い事務室にはよく人が集まり、各々が自分に最適な温度設定にしていく。自分のことしか考えていない野郎共の集まりであるのでに致し方ないのだが、いつもヒースは過度に冷やされた部屋の被害に遭っていた。基本的に事務室に篭っている運営は、あれでいて存外丈夫なために極寒の部屋に長時間居てもけろっとしていた。
 ミズキは特別暑がりでも寒がりでもない。なんせ冷房も暖房も使わぬ生活を送ってきたのだ。冷房の有り難みは知っているが、皆のように依存するほどでもない。夏のうだるような暑さも、冬の凍えるような寒さも、慣れてしまえばどうってことないのだ。

「固いんだよ、これ」

 ヒースはただミズキについてきただけであったが、ミズキは自分でも気付かぬうちにヒースの分のアイスも購入していた。別に2本とも自分で食べても良かったし、ヒースもそう言ったのだが絵面的にプライドが許さなかったので当初の通りに譲ってやった。おこぼれを貰った立場にも関わらず、カップが良かった、とヒースは生意気にも言いやがったが。その時ミズキはヒースの頭を叩いた。

「お前マジでジジイだな。固いもん食えねーとか」
「疲れるんだよ、噛むの」
「鍛え方がなってねーんだよ」

 店に帰るまでにアイスは溶けてしまうので、2人は近くの公園のベンチに腰掛けアイスを食べていた。日中は体温くらいに気温が高いので、公園で遊ぶ子供らはいなかった。
 少しずつアイスを齧るヒースを横目に、ミズキはベンチから立ち上がって大きく伸びをする。空を見上げると、雲の妨害を受けない太陽がここぞとばかりの光線を放っていた。

「店帰ったら筋トレでもやろーぜヒース」

 なんて事のなしに呟いた言葉に、「1人でやってよ」と返答がされた。

「オレがミズキと同じメニューの筋トレしたら死ぬでしょ」
「うん、死ぬ」
「うん、じゃないって」
「いーんだよ、死ぬくらいがちょうど良いって金剛も言ってたって」

 嘘である。

「嘘でしょ」
「おう」

 金剛は無理は禁物、と言うのだ。適度な負荷に留めていないと成長しにくくなるから、と。金剛のような筋肉のしっかりついた身体になりたいミズキは、過度な筋トレを行なっては注意されている。その光景は、チームBの中では恒例となっていて、ヒースも例外ではなかった。
 会話の間際にヒースが食べ進めたアイスはほんの僅かであり、まだ時間がかかりそうである。ミズキは仕方ないな、と自分を納得させる。  
「オレやっぱもう1本買ってくる」

 そう言ってミズキは駆け出す。「腹壊すよ」と水を差すヒースに、ミズキは笑って返した。

「オレはお前みてーなジジイじゃねーから平気なんだよ!」